夏の怖い話-8
「お、おい、店の扉もちゃんと鍵がかかってるし、シャッターも閉じたままだぞ……窓も割られてないし、内鍵もちゃんとかかってる……もし誰かが居たのなら、一体どうやって入ってきたんだ?」
「うーん……店内のどこかに潜んでいたんですかね〜?」
「だが誰もいないじゃないか。それに、店の外へ出た形跡だってない」
「じゃあ……もしかしたら幽霊??」
後輩がそう呟いた直後、
カンカンカンカンカンッ-――!!
再び階段を駆け上がる足音がけたたましくフロアー内に響いてきた!
「うわああっ!!」
僕達は同時に叫び、ビクンッと両肩を釣り上げた。
それから、包丁やフライパンを手にオドオドしながら2Fを探したが、やっぱり人の痕跡はなかった。
僕達は全ての電気を点けっぱなしで2Fの部屋に戻り、無言のまま朝を迎えた。
事を荒立てたくなかったので警察は呼ばなかった。
もし呼んでいたとしても、店内を荒らされた形跡や侵入した形跡すらないのだから、警察も仕事のしようがない。
僕は、昨夜の出来事を絶対に他言しないよう後輩に釘を刺してから、迅速に神社へ相談の電話を入れた。
そして、紹介してもらったお坊さんにすぐ来てもらい、お祓いしてもらった。
店長としての資質には欠けるが、後輩の神経が図太くて助かった。
彼は移動を希望するでもなく、会社を辞めるでもなく、その後もしっかりと努めてくれた。
まあ、彼がその店に居残ってくれた理由として、実は図太い神経だけじゃなく、その店の女性アルバイトの一人と恋仲になっていたことは現在の今でも知らなかったことにしているわけだが。
ちなみに、お祓いをしてからは霊感の強かった女性アルバイトの子も別人のように明るくなりました。もちろん、霊現象もまったく起こらなくなりました。
あの夜に体験した不可解な足音が、本当に幽霊によるものだったのかどうかは……やっぱり霊感ゼロの僕としては今でも確信が持てません。