もしも…-2
ここ数ヶ月間、体の調子が悪かった。
自分で働きすぎたんだって思ってた。
薬を飲んでも様子が変わる事もなく、どんどんしんどくなった。
軽い気持ちで病院に行って診てもらった。
本当に軽い気持ちだったの…
ねえ?
もしも、私が後半年も生きられないって知ったら…
あなたはどうする?
それでもプロポーズしてくれた?
優しいあなただから、私に残された時間を一緒に過ごしてくれたんだと思う。
最後の日まで私を愛してくれるんだと思う。
けどね、それじゃいけないの。
私には後少しの命しかないけれど、あなたにはまだ長い長い人生が残ってる。
それを私が邪魔しちゃいけない。
私が死ぬまで一緒にいたら、あなたはきっと、次に進めなくなちゃう。
私には分かるの。
人一倍優しいあなただから、きっと悲しみから抜けられなくなってしまう。
それにね…
あなたが悲しみの中にいる時、私はもうあなたの横にはいないの。
どれだけ一緒にいたくても、もう私にはそれは出来ない。
あなたの涙を拭って、大丈夫だよって言ってあげられない。
私は、自分だけの幸せの為にあなたのそばにはいられない。
あなたには、誰よりも幸せになって欲しい。
あなたと結婚して、家族になるのが私の願ってたことだったけど、今の願いはあなたの幸せだけ。
私はもう十分あなたに幸せにしてもらった。
愛してもらったもの。
だからね。
今までの三年間で初めてあなたに嘘をついた。
『嬉しいけど、ごめんね。私他に好きな人がいるの…だから彰とは結婚出来ない。』
ごめんね…
けど、こうするしかなかった。
本当はずっと一緒にいたい。
けど…もう一緒にはいられないの。
あなたを悲しみの中に引きずり込む勇気は私にはないの。
だってね、私はあなたを愛してるから。
世界中の誰よりも…
あなたを愛してる。
いつも、あなたと一緒に歩いた道を一人で歩く。
この道を三年間、ずっと一緒に手を繋いで歩いてたのに…
いつも大きな手で私を包んでくれてた。
歩くのが遅い私のペースに合わせてゆっくり歩いてくれた。
前から仲が良さそうなカップルが歩いて来る。
まるで…
ほんの少し前の私達みたい。