投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

熱帯夜
【その他 恋愛小説】

熱帯夜の最初へ 熱帯夜 2 熱帯夜 4 熱帯夜の最後へ

熱帯夜-3

「俺さ、」
「うん」
「ここんちの奥さんの、」
「うん」
「愛人」
「…」

硬直。
愛人?
愛人って愛人?
つまり、不倫相手―――

「えぇえむぐっ」

絶叫しかけた口は愛人野郎に塞がれた。

「シーッ!大声出すな!」

出すなって、そりゃ無理でしょ。
愛人を自宅に住まわせてるの?
お隣りの奥さんが?

「うそ…」

あの人すごくいい人だよ?
仲良く話す間柄じゃないけど、会えばきちんと挨拶してくれるし、おすそ分けなんかもくれるし、回覧版持ってった時だってにこやかに接してくれたし―――

「ま、そーゆう事」
「そーゆう事って何!?」
「声がでけぇよ」
「だっ…て、そりゃそうでしょ?旦那さんは家族と離れて頑張ってるのに自分は愛人作るって――」
「寂しかったんじゃないの?」
「寂しいのは旦那さんも一緒でしょ!」
「それはそうなんだけど」
「ていうか、あなたは恥ずかしくないの!?」
「へ、俺?」
「そうよ!」
「俺は別に…」
「いくつだか知らないけどかなり若いでしょ?だったらそこら辺の若い子捕まえればいいじゃん。何でわざわざ人妻なの?小学生の子供達はどうなるのよ!」
「あぁ…、子供ねぇ。子供は今――、夏休み…、そう、夏休み!ばあちゃん家に行ってる」

はぁ―?
ばあちゃん家だぁ?
あの奥さんの印象180度変わった。
最っ低じゃん。

「子供預けて自分は若い愛人連れ込むって、頭おかしいんじゃないの」
「そんな言い方するなよ!」
「…」

至極当たり前な事を言ったつもりだったのに、愛人野郎は予想外に声を荒げた。

「あ、いや…、そんな言い方しなくてもいいんじゃないかな」

そして全く同じ内容を今度は優しく言い直した。

そっか。不倫だとか愛人だとか肩書きは不純そのものだけど、こいつはあの奥さんの事が好きなんだ。だから最低なんて言われて怒ったんだ。

あたしって、意外と無神経だったんだな…


「あのさ、俺ほんとは――」
「分かった!」
「俺―…、うん?分かったって…?」
「あなたは本気で奥さんが好きなのね?」
「……………へ」
「辛い恋をしてるのね」
「は?辛い…、恋――?」
「あたし絶対あなたの事内緒にする。その代わり、条件があるの」
「あ、お、おぉ」
「子供達が帰ってきたら、潔く出ていって」
「…なぁ、俺――」

愛人野郎が何か言いかけたその時だった。


熱帯夜の最初へ 熱帯夜 2 熱帯夜 4 熱帯夜の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前