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熱帯夜
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熱帯夜-2

「のぞき…?」
「っ!?」

低い声が足の向こうから聞こえて、慌ててカーテンを閉めようとして

ブチンっ

「ぎゃっ」

勢い余ってカーテンのフックが外れてしまった。
完全にパニック状態。
声の主は起き上がって、あわあわするあたしをじっと見た。

よく見たらオッサンじゃない。若い男の子だ。
ボサボサの頭をボリボリと掻きながら、眠そうに目をパチパチさせて怪訝そうな表情をする。

ヤバイ、痴女だと思われたかも…

「あの、し、失礼しまー…す…」

何事もなかったように窓を閉めようとすると、

「お姉さん、覗き魔?」

最悪なレッテルを貼られてしまった。

「違います!暑いから窓を開けただけ!」
「へー?ふーん」

何、この温度差!
こっちは必死に誤解を解こうとしてんのにさ、ふーんってどーゆう事よ!
大体ねぇ――

「…何すか」
「あなた、どちら様?」
「……………は?」
「だって、お隣りのご主人は単身赴任で、お母さんと小学生の子がいるだけなのに」
「………」
「あ、親戚の方とか?」
「いや、いやいや」
「じゃあ――」

更に聞き返そうとすると、そいつは少し間を置いてからニッと歯を見せて怪しげに笑った。

「…誰にも言わない?」
「え」
「俺の事、秘密にできる?」

何…
訳あり?
会話をしてしまった以上後には引けずコクンと頷くと、そいつは自分の部屋の網戸を開けてこっちへ来いと手招きする。

「…」

不審に思いながらも言われた通り窓から顔を出した。


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