完・嘆息の時-4
「同窓会さ、俺にとっては記念すべき日になったよ」
「えっ……?」
「だって、ずっと片想いだった女性にようやく逢えたんだもんな」
口につけたグラスをスウーッと持ち上げ、シャンパンを一気に飲み干してからグッと身を乗り出す神山。精悍な眼差しを真っ直ぐに女へと向け、ニコッと微笑んだ。
「えっ、そ、そんな……だって、だって神山くんは……」
「俺さ、もし君に逢うことが出来たら、これを……見せようと思ってたんだよね」
少し照れながら、神山はポンッと一通の手紙をテーブルの上に置いた。
「これ……えっ……ええっ!? こ、これって……ど、どうしてッ……!?」
驚愕の表情で手紙を見つめ、女が微かに震えている手をそこに伸ばす。
「嘘っ……違うわ……だって、だって、神山くん」
あからさまに動揺しながら、女は手にした手紙を裏返した。
滝川愛璃―――
手紙の裏に書いてある差出人の名前、そこには確かにそう書かれていた。
「どうして……? ねえ、どうしてまだコレを持ってるの?」
「あの頃の俺って、本当にどうしようもないくらい餓鬼だった。ずっと君の事が好きだったくせにさ、いざその本命の子からラブレターもらったとたん見栄を張っちゃって」
「ずっと……? ずっと好きだったって……どういうこと?」
「ああ、ほんとに情けないったらありゃしない。君からラブレターもらったことを周りからずいぶん冷やかされてさ、それで思わず心にもないことを言っちゃったんだよ。あんな女、俺のタイプじゃないってね。今思うと、ただ嫉妬してただけだったんだよな〜、あいつら。ほら、君って学校のアイドルだったからさ」
「そ、そんな事……私、返事がもらえなかったから、てっきり……」
「もちろん本心は違ってた。俺は、中一の頃からずっと君だけを見ていた。一目惚れってやつだよ。だから、高校へ進学して、ある程度ほとぼりが冷めたらさ、今度は俺のほうから告白しようって思ってたんだ。でも高校は別々になったし……しかも俺、すぐにアメリカへ留学しちゃったからさ」
「か、神山くん……」
高ぶり止まない鼓動が、愛璃の耳元でいっそう大きな音を立てていく。