邪愁(その3)-1
黄昏と夜が仄かに溶けあう時間の中で、私の肌に甘く湿った空気が執拗に絡む。
私は古ぼけたリヤカーのざらりとした荷台に乗せられ、密林の奥へと男に運ばれていた。全裸の
まま手首と足首を束ねるようにロープで縛られ、まるで死んだ家畜の肉塊のように背中を丸めな
がらも、陰部には切り取られた豚の性器を含んでいた。
いや…私の性器の中は、豚が放出した精液とともに、切り刻まれた豚の螺旋状のペニスの肉片を、
まるで腸詰めにされたように含んでいたのだった。
性器の中にたっぷりと含んだ豚の精液…さらに、男は、そのぬばぬばした精液を、私の全身の肌
に塗り込めたのだった。
…奥様、ほら、見てくださいよ…早くも、豚の精液の臭いに、あの奇怪な野鳥が集まりはじめま
したよ…
肌脱ぎになった浅黒い肌をしたあの男の背中に汗が滲んでいる。密林の樹木の間から見える空は、
すでに昼間の灼熱の太陽が、どろりとした血色に変化していた。昼間は強い太陽の光から息を潜
めるように気怠い眠りに満ちていた密林が、空に群がり始めた鳥の啼き声とともに、目覚めてい
るようだった。
男は密林の中の大きな樹木の前で、リアカーを止める。
地面に降ろされた私の首筋から、豊満な乳房のなだらかなすそ野にかけて、無数の蟻が群がって
くる。男は手足を束ねるように縛ったロープを一度解くと、あらためて私の手首を後ろ手に縛る。
さらに二肢を腿の付け根から左右に裂くように脚を開かせ、細い足首を錆びた鉄のパイプの両端
に、慣れた手つきでで縛りつける。
…奥様…もう、濡れてきたでしょう…あの野鳥の長くて尖った嘴を見てくださいよ…あれで、性
器を啄まれるのは、最高にいい気分ですよ…
男が枝から垂れ下がった鎖を引くと、ガラガラと錆びた金属が軋む音とともに、高い樹木の枝に
つけられた滑車が回転する。足首を縛りつけられたパイプに繋いだ鎖によって、私の肢体が引き
上げられ、体全体がゆっくりと逆さに宙づりにされていくのだった。
太腿の筋肉がピンと伸びきり、すっと私の体が宙に浮きあがる。髪の毛が毛穴から抜かれるよう
に、頭髪が地上に向かってだらりと垂れる。私は頬を横にねじり、喘ぎながらも、乳房の弛みと
体全体の肉の重みを頭の中に感じていた。
恐怖が全身に広がりながらも、ぶらりと逆さに吊された私は、ふわりとした肉体の解放感を感じ
ていた。
…いい眺めじゃないですか…奥様…
男は満足したようにつぶやき、私の臍から陰部にかけて淡く靡いた茂みへと卑猥な視線を這わせ
る。私は裂かれるように開いた白い太腿の付け根を捩ると、微かにラビアピアスの潤みを感じた。
…ゆっくり見物させていただきますよ…と男は言いながら、私を吊した樹木から離れていく。
やがて、野鳥のけたたましい啼き声が聞こえてくる…。