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非常シキなカンケー
【幼馴染 恋愛小説】

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非常シキなカンケー-6

 それからまた非常式の関係が始まったの。
 お昼休みとかわざわざ質問しに行くフリしたり、放課後、部活が終わった後に待ってたりね。
 誰かに見つかっても家の方向一緒だし、怪しいけれどとにかく変ってわけじゃなかった。
 もちろん、見抜いていた人も居るけどね。
 今度セットメニューの一つでも奢ってもらわないと……。
 それが非常識に変わったのはいつの頃だろう。
 彼の教育実習が終わった翌年、私は高校受験。
 今でこそ、高校受験なんてたいしたものじゃないし、そこまで悩む必要なんて無かったって思えるけど、当時は皆が皆受験戦争だ、周りは皆敵だって煽り合っていたし、なんか自分だけ誰にも相談できない、頼れないって心細くなっていた。
 だってお父さんは単身赴任に行っちゃうし、お母さんは仕事に行くしで三者面談以外じゃろくに進路相談もしてなかったの。
 なんかいろいろどうでもいいやって思ってた。
 そんなときに彼が電話をくれた。
 ――俺は教師になるんだ。いろんな人に数学を教えて、いや、そういうんじゃなくって、他にもすっごく、なんつうか、とにかく人を育てる人になるんだ!
 ってさ。
 なんかお酒に酔っ払っているみたいで、すごくムカついたのを覚えてる。
 っていうか、こっちは受験だっつうの!
 今何時だと思ってるの!
 他に言うことは無いの?
 人が絶望しているっていうときに嬉しそうに未来を語りやがって!
 恨み言はいくらでもあったの。
 ――う、うぅ……うえーん、うわーん!
 でも、私は泣いてた。
 言葉にならないなんか喚いていたの。
 なんかすごくうらやましくて、ずるいって思ってさ。
 とにかくその場では彼は何もわからずに平謝りしてた。
 残ったのは惨めな気持ちだけ。
 本当に最悪な三十七時間だった。
 そう、最悪なのはその三十七時間だけ。
 次の日の次の日、塾から帰ってきた私を出迎えたのはどこか草臭い彼。
 最初浮浪者か何かと思った。
 なんか話によると着の身着のまま深夜バスに乗ってきたとか。
 しかも、行き先間違えてそのせいで時間を食ったとかね。
 もう馬鹿じゃない?
 で、なんで来たかっていうとさ、私が泣いていたのがすごく不安だったからって。
 そんなの電話でいいのに。
 そのためだけにバイトとかいろいろ変わってもらったりとかしてきたって。
 ホント非常識な人だ。
 それでね、彼、相談に乗ってくれた。
 受験のこと、高校のこと、その後のこと。
 教師を目指すだけあってかなりそういうのに詳しかった。
 もうほとんど覚えてないけど、子供心にすごくカッコイイ、頼りがいのある人だって思った。
 でも、そういうんじゃない。
 それだけじゃなかった。
 私が抱えていたこと。
 根幹にあるのは寂しさ。
 誰も居ない家で一人ボッチなこと。
 塾でも学校でも一人だってこと。
 それが例え一過性のものであったとして、今だけの時期だとしても、やっぱり辛かった。
 ――貴方に罰を与えます。
 彼は困ってた。
 多分、謝っていたと思う。
 だけど、許さない。
 今まで私を一人にしていたこと。
 自分ばかり夢を追い、希望に溢れていたこと。
 貴方のおかげでこんなに救われたのに、謝ってばかりいること。
 難癖をつける私と、だんまりの彼。
 そのままベッドに誘って……、
 んーん、なんか変なにおいがしたから先にお風呂に入らせたんだ。
 その間に私はお母さんの部屋のタンスの一番上の右を漁った。
 使用期限がぎりぎりなのが新品なままにあったから、それを箱ごと拝借した。
 そのときは舞い上がっていたから全部使いきるまで許さないとか本気で思ってた。
 もちろん、一回終えたところで「もう二度としない」と彼に泣きついた。
 そのあとは腕枕をしてもらったけど、起きた頃には彼をベッドから蹴り落としていた。
 中学生と大学生。
 非常識な関係だ。
 非常識な関係になったんだ。
 私達。


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