Crimson in the Darkness -出遭-T-2
よく考えれば、こうやって態々(わざわざ)ベランダでタバコを吸う必要もなくなるわけだし、寝床も戻ってくる。気を遣ってテレビを付けないなんてこともしなくて良いわけだ。今まで通りになる。
お互いに良いコトじゃねぇの?
「そりゃそうだ。それがフツーだったんだ」
「なあ、何、さっきからヒトリゴト言ってんの? アーク。ついに呆けたのか?」
いつからなのかベランダと部屋を繋ぐガラス戸から顔を覗かせてたのは赤毛のガキ。
「馬鹿ガキ。追い出されたいのか?」
まだ20だ。ボケてねぇ。家主を馬鹿にするなよ?
「ゴメンナサイッ」
冗談のつもりだったんだけどな。そんなに青ざめること無いだろ。
「もう、寝ろ。ガキは夢の時間だろうが」
「うん。おやすみなさい」
リーは小さく笑ってガラス戸から離れようとする。気付けば、それを追うように数歩前に出て、呼び止めてた。