投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

長い夜
【大人 恋愛小説】

長い夜の最初へ 長い夜 26 長い夜 28 長い夜の最後へ

長い夜 四-7

「うん、もちろん」

遼子もそれにはテンポよく弾んだ返事をした。

「じゃ・・また あとで」

真人が手を振る。さわやかな笑顔が遼子を照れくさくさせた。

手を振り返す間もなく、真人は駆け出した。
軽い身のこなしも鋭敏な筋肉も、遼子への思いではじけているように見えた。

可愛いな・・・素直で真っ直ぐで・・・まいったな。。
さっきの胸キュンがときめきに変わったまま治まらない。
何なのよ・・マジでその気になっちゃってるのか?私。
ばかげているように自分を戒めながらも、悪い気分ではなかった。
それこそ、こんな気持ちもずいぶん久しぶりだと感じた。

佐伯を思う切ない痛みも心地良い
だけど、真正面から好きだといってくれる真人には、自分を遠慮なくさらけ出せる甘えもあった。

年下だから甘えられるって、そんなこともあるんだな、と
年上の男性しか恋愛の対象としての経験がなかった遼子には
新鮮な感覚だった。

今夜は「ふるさと」に行くべきか、じらしてみるのもいいかな
などと、悪気はないものの余裕を楽しんでいる自分もいた。

部屋に着くとすぐに携帯メールが鳴った。
真人からだった。

「今、帰りました。遼子さんは?逢いたい。もう、逢いたくてたまらない。こんなこと書いたら、ストーカーみたいで嫌われるかな?ぜったい店に来てよね!今日は楽しかったサイコー!ありがとう」

「もう・・・・っ、」

困った顔でクスッと笑った。
困ったのは自分のときめきが激しくなるせいだ。

「私も今着きました。今日は美味しいお店と買い物にも付き合ってくれてありがとう。私も楽しかったです。バイトがんばってね」

送信・・・。

ふぅーっとため息をつきながら、ソファに腰掛けるとまたすぐメール着信した。

「がんばってね・・・って、今夜来ないつもり?お店では絶対みんなにバレルような態度しないし、話しかけない。約束するから、来て欲しい。顔だけでも見たいんだ」

やれやれ・・・ときめきに、ちょっぴり疲れが出だした。
やっぱり、若さについていけないかも・・・と思いながら
真人の気持ちを佐伯にたいする自分の気持ちと置き換えるとわからなくもない。

そんな思いで真人に接するのが良いか悪いかはわからないが
ただ、真人が愛おしく思えるのも事実で偽りではなかった。

素直になりたい。真人のように、とまでは行かなくても
自然に自分の感情を、喜びを表してもいいかなとも思い始めていた。

「わかった。行くよ。真人が頑張ってる姿を見にいきます。
また あとでね」

そう送信すると、真人も落ち着いたのか返信してこなくなった。
単純に、純粋に、うきうきと飛び跳ねる真人が見えるようだ。
遼子もまた、同じうきうき感をもって真人の選んだ春色のブラウスをクローゼットに片付けはじめた。


長い夜の最初へ 長い夜 26 長い夜 28 長い夜の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前