長い夜 四-4
「僕は遼子さんから見て、男には見えないんですか!」
「お・と・こ・・・?」
遼子はまた キョトンとして真人の顔を見上げた。
思わぬ真人の真剣な表情に、料理を喉に詰まらせそうになって水を一気に飲み干した。
「ごめん、真人くん どういうこと?」
真人の顔が見る見る紅潮したかと思うと、瞳がうるうるしだした。
ガックリと肩を落とすように力を抜いて真人は話し出した。
「今日、こうして偶然に逢えて、俺にしてみれば奇跡なんです。一か八かで今勝負しないと、次なんてないじゃないですか。遼子さんには突然すぎて、もともと俺なんか目じゃなくて・・・迷惑だったら謝ります。でも、俺、真剣に遼子さんのこと好きです。ずっと ずっと好きだったんです。完璧年下で子供にしか見えないかも知れないけど・・・俺・・・」
ひざに乗せた握りこぶしが震えていた。
遼子には唐突で思いもしていなかったことだったが、真人が
冗談で言っているのではないことは伝わった。
自分があまりにも心無い態度で、確かにかなり年下だということで
油断していたことを反省した。
「ごめん、真人くん。 ほんとにごめんなさい」
「謝らないでくださいよ。ダメってことでしょう?」
「あ、、いや、そうじゃなくて・・」
え?と 期待に輝かせた真人が顔を上げた。
「え・・と、そうじゃないっていうのは、そうじゃなくて・・・真人くんの気持ちに気づかずにごめん・・・って・・・」
「・・・なんだ・・・」
と また真人はうつむいた。
「俺・・・僕・・そんなに子供ですか?遼子さんから見て子供すぎますか?来年すぐに成人します。遼子さんっていくつなんですか?もちろん、俺には年の差なんて関係ないけど」
「へぇ、まだ未成年なんだ・・・っと・・ごめん。しっかりしてるし、体も大きいし、もう少し上かと思ってた。私は・・・たしか・・・27になるのかな、今年。8つ違いかな」
「7つでしょ?まだ。まだ26なんでしょ?」
一つのことに必死になっているこの青年は、遼子よりむしろ年齢差を気にしているのかも知れない。
「真人くんは、りっぱな大人に見えてます。カッコイイしイケメンじゃない?学校でもモテルでしょう?」
「何っすか それ。 はぐらかし ですか」
不機嫌そうに水を飲み干して真人はまた真剣な顔をした。
「さっきも言ったように、俺にとっては真剣そのもので喉もカラッカラで告白しました。俺を一人の男として見てくれるなら俺と付き合ってください。お願いします!」
まっすぐな熱意に心が揺れた。
同じ年代なら、自分の方が憧れてしまうであろう素敵な青年だと思う。
そんな青年が、今頃、この年になって、こんな私に好意をもってくれるとは。