警部補 少年係-11
「どうぞ。」
父親が招き入れながら、床に並べてある二足のスリッパを履くように勧める。異常なしと判断してから履く。もちろん一瞬の判断だ。異臭や怪しい人影はないかも同時に確認する。
こうしてやっと上がると玄関のすぐ右隣にある、扉の中に案内された。この扉もまた白い。中に入ると、食卓と思われるとても丈夫そうな木のテーブルの奥に夏浦瑠璃子と思われる少年が座っていた。14帖ぐらいのリビングで、対面式の台所がある。台所はだいたい4帖だろうか。
見た目の第一印象はおとなしそう。黒髪のショートで眼鏡をかけている。ぽっちゃりとした体格だ。とても110番などしそうには見えない。
「こんにちは。」(山田。)
「こんにには。」(少年が返す。)
一気に緊張したムードが漂う。
テーブルまでは少しばかり距離がある。
父親が少年の隣に座る。
山田が少年と向き合う位置に立ち、その隣に下中が立つ。
「天留川警察署、警部補の山田です。」「巡査部長、下中です。」(警察手帳を見せる。)
父親は覗き込んだが、少年は興味がなさそうな素振りを見せる。
山田が座ったのを見計らって、下中が座る。
椅子に座るなり山田が少年に五人組の顔写真を見せる。
「あ!」
と、少年がうなずく。
「どの人?」
山田が問う。
「この人です。」(斎藤安行を指す。)
(12人の顔写真を山田が財布から取り出す。)
「じゃ〜これは?」
(左端から順番に見ていって途中でうなずく少年。自分の中で確認しているように見える。)
「この人です。」(自信ありげな様子で、斎藤安行を指す。)
犯人の顔は認識しているということがここで始めて証明される。
「うん。うん。」(山田と下中が確認しあう。)
(12人の顔写真を山田が財布にしまう。少年は少し興味深げに財布をみつめる。因みに中身は顔写真の他に運転免許証と1000円札一枚である。)
「うん。じゃ〜特徴教えて?」
山田が語りかける。