唯高帰宅部茜色同好会!(第二章)-5
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正確な時間はわからないが、お化け屋敷に入場して早5分。
俺たちは身を屈めながら一列になって、一定の速さで歩みを進めているが、いっこうに怖がる要素はない。
ただ、ここの舞台設定は廃病院らしく、ストレッチャーや車椅子が無造作に置かれているというだけでかなり雰囲気はある。
「あー、忘れてた」
「ん?」
後ろのサキの声に耳を傾ける。
「ここってすっごい長いお化け屋敷なんだよ」
「先に言え!」
相変わらずの天然振りだな…
だが待てよ、しばらく歩いても何も仕掛けがないのは、まだ全然先があるからか?
マジかよ…こういう類は大丈夫なほうだが流石にこえーよ…
「しっ!」
一番最後尾のアイサが声を上げた。
「足音が聞こえます…」
「げっ!」
「……面白くなってきたわね…」
確かに耳をすますと、先の方からカツカツとヒールのような足音が聞こえる。
「ま、前の人たちじゃ?」
「…アッキュ、よく聞いてください…この音は…前からこちらに向かってきています…」
「まさか」
そう言って懐中電灯を前に向けたときだった。
「ぎゃああああ!!!」
「きゃああああ!!!」
先頭と二番目の俺とマリィはもろに見てしまった。
全身血まみれのナースを。
「なっ!なんだよ!!」
「行くぞ!急げ!」
俺が早足で進むとみんなも慌てて付いてくる。
しばらく行くとナースの姿も見えなくなり、溜め息を吐いた。
「どうしたんだよ…急に二人で叫んで」
「びっくりしたよー」
「びっくりしたのはこっちよ!!いきなり血まみれのナースが目の前に!」
「あれリアル過ぎんだろ!」
「…ちぇ、俺も見たかったぜ」
それなら、見ますか?
「え?」
突然の第三者の声に、全員が振り返る。
俺が向けた懐中電灯の先には…
「ぎゃあああああ!」
「いやぁああああ!」
「えええええええ!」
「きゃあああああ!」
「っっっっっっっ!」
再び血まみれのナース。
今度は全員、はっきりと見てしまい慌てて順路の方へダッシュした。
先の角を曲がってからようやく止まって息を整える。