唯高帰宅部茜色同好会!(第二章)-16
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「お待たせー」
俺とサキが待ち合わせに到着すると、既に四人は合流していた。
「なんかマリィ、濡れてない?」
「あれ、やっぱりまだわかっちゃう?これでもだいぶ乾いたんだけど」
こいつらあれに乗ったのか…
「……サキは何をしていたんですか?」
アイサがサキに問いかける。
「え?観覧車に乗ったりしたよー」
「かっ…観覧車…そうですか」
「ユーリ、アイサは何で動揺してるんだ?」
「……」
隣に立っていたユーリに問いかけたが、ユーリは黙って俺を見つめていた。
睨んでるわけじゃないよな…?
眉を潜めているわけではないが、なんだか俺の顔一点を見つめているとそう感じた。
なんとなく目を逸らし、キスケを見た。
「っ」
なぜかキスケも、ユーリと同じように俺を見ている。
なんかやらかしたっけ…?
自分だけが多少気まずくなりながらも、集合時間が近付いているためやむを得ずぞろぞろとバスの停留所まで歩き出した。
後ろではマリィとアイサが話していて、前ではキスケとユーリが黙って歩いている。
隣にはサキがいた。
「ね、アッキュン」
「ん?」
「なんであたしがアッキュンって呼ぶかわかる?」
微笑んでいるサキ。
「実は前から気になってたんだ。なんでだ?」
ちょうどバスに乗り込むと同時に、サキは小さな声で言った。
「ふふ。あたしだけの呼び名が欲しかったんだー」
「……」
「みんな大好きだけど、アッキュンだけは特別なの」
バスで隣に座ったサキは笑顔のままそう言った。
みんなに見えないところで、キュッと俺の制服の袖を握って。
「……」
そりゃあサキは好きだ。
可愛いし、気が利くし、俺のわがままにも付き合ってくれるし。
こんな子は二度と現れないかもしれない。
でも、付き合うとなると考えてしまう。
どうなんだろうな、小さい頃から今まで片時も離れずにいた相手と恋人同士になるのって。
きっとまた今日みたく、普段と変わらない態度で接して怒らせるんだろう。
それに、キスケやユーリがサキのことを好きだったらどうしよう。
仲間内で揉め事だけは起こしたくないな…
窓から景色を眺めながら、ずっとそんなことを考えていた。
俺とサキは幼なじみ。
ただ家が向かいだからっていうだけ。
そう思いたいけど違うのか?