唯高帰宅部茜色同好会!(第二章)-14
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「それで結局、観覧車か」
俺はゴンドラに乗りながら呟いてみた。
「デートと言ったら、やっぱり二人きりの観覧車だよー」
サキは悩んだ挙げ句、観覧車に決めたらしい。
扉が閉まると少し揺れ、上昇を始めた。
「あいつら、どこにいるかな」
下を見るが、当然他の茜色メンバーの姿は見当たらない。
「もうアッキュン!二人きりなんだから二人のことを話そー!」
サキがぷんすかと怒りを露わにする。
「二人のことって言ったって、よく休みの日は二人でいるしな…そうだ!五巻は返してもらったか?」
「……そうじゃなくてー、茜色の中でさらに二人になれたんだから、茜色っぽい二人の話だよー」
「……どんなだよ」
いまいちサキの言いたいことがわからない。
だが、俺の考えが伝わったのか、すぐにサキは切り出した。
「アッキュンはさ、茜色の中で好きな子、いるの?」
「はぁ!?」
マリィが最近、恋愛のことばかり言ってるのに影響されたのか?
「マリィとかアイサとか…あたしとか」
「……」
真面目に言ってるのね。
いつもの冗談で切り替えすつもりが、サキの真剣な顔を見て躊躇われた。
まあ、サキだからってわがままばかり言うのも悪いな。
「みんな可愛いとは思うけど、恋愛感情はないな、仲間意識が強い」
そう答えて、前にも同じような話をしたのを思い出した。
あのときはマリィだったな。
「……恋したいと思わないの?」
「ん…俺って成り行きで生きてきてるからなー、誰かに告白でもされたらわかんないな」
そう言うとサキはすっと顔を上げた。
「嘘つき、アッキュンはいつもちゃんと考えて行動してるよ」
「……はぁ?」
思いがけないことを言われてたじろいでしまった。
「茜色を作ったのだって、みんなはアッキュンの言う成り行きで仲間になったって思ってるかもしれないし、アッキュンも成り行きで仲間にしたって思ってるかもしれないけど、アッキュンはちゃんと考えてみんなを引き入れたんでしょ?」
「…どういうことだ?」
なんて言いつつ、俺は焦っていた。
サキとキスケの初期メンバー以外…
最初に入ったマリィは一人ぼっちでいるのが見ていられなかったため。
次に入ったユーリは学校で自由になれる時間を作ってあげるため。
最後に入ったアイサは仲間を作って遊ぶ楽しさをおしえるため。
「みんなわかってる。だからアッキュンは慕われてるんだよ」
当初の話題からは完全に逸れてはいたが、サキの言葉はすごく心に響いた気がする。
確かに、全て成り行きで済ませるのはあいつらに失礼だった。
あいつらはいろいろな思いを抱えて、茜色に入ったんだ。