小太郎、しゃべる-4
「次はどこかの星からきたとか言うんじゃないだろうな」
「・・・・・・何か言ったか。すまん、喋りすぎて眠くなってきた」
すまんと言っときながら全く悪怯れる様子も無く、欠伸をしながら丸くなりやがった。
本当に自由な奴だ。喋りたいんじゃなかったのか?
「おい、起きろよ。もう話は終わりなのか?」
・・・尻尾すら動かさない。
こうなったらもう小太郎は夢の世界に旅立っているのだ。
眠気がどこかに行っちまった。じゃあ、ついでに俺もどこかに行くか。
たまには予定も無しにぶらついてみるのも悪くないな。
「約束だからな・・・自転車、乗せろよ」
玄関を開けようとした時、微かにくぐもった声が聞こえた。
まるで寝呆けている様な、意識が定かでない声だった。
聞いてやってもいいけどさ。
でもそうして欲しかったら、ちゃんと顔を見ながらお願いしてくれなくちゃ。
なんて、それが出来ればもう小太郎は小太郎じゃない。
連れてってやるよ。お前の気が向いた時にな。
かごに乗せてわざとよろけながら運転して、困らせてやりたいなぁ。
夏の日射しは容赦なくアスファルトを照らして、見渡す先に陽炎が昇っていた。
〜終わり〜