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小太郎
【家族 その他小説】

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小太郎、しゃべる-3

「休みというのは、人を突き動かすものなのか。陸奥彦」
「さあな。俺は遊ぶ時は遊ぶが、どこにも行かない時だってあるぜ」
「そうか。何の答えにもなっていないな」

面倒で寝ながら小太郎と話をしてやった。
小太郎は窓から外を眺めながら、尻尾をぱたぱた振っている。
つまらなそうな返事だが、尻尾の勢いはそれなりにあるので、万更でも無さそうだな。


「姉ちゃん髪もっとまっきいろにした!こーこーでびゅーだ!」
「ちょっと浩之!暴れたら落ちるわよ!」


自転車に乗った姉弟らしき二人組が近くを駆け抜けていった。
一瞬だったのであまり見えなかったが、時折見かける姉弟かもしれない。
もしかしたらこの近くに住んでるのかな。


「楽しそうだったな」
「そうか?一瞬しか見えなかったぞ」
「俺もいつか、ああして自転車に乗ってみたい」


小太郎がじっと俺を見つめてくる。何故か、犬ではなく人間の様な目に見えた。
この目はよくおねだりする時にしてくるのと同じ・・・か?
似てはいるが、何というか雰囲気が違う気がする。いつもより思いが込もっている様に感じた。

「・・・行こうか」
「いや、暑いからいい」

体を起こそうとした手から力が抜けて、ずるりとこけそうになってしまった。
即答かよ!
断るとしても少しくらいは迷えよな。まったく。
行きたいと言っといて何だそりゃ。お前は気まぐれすぎるんだよ、いつも。

「今のところは満足なのだ。俺がしたい事を、お前に伝えられたのだからな」
「喋れるならいつだって伝えられるだろ?」
「・・・分かってないなお前は。それじゃロマンチックじゃない。出来るからすぐやる、それじゃあ駄目だ」

なーにがロマンチックだ。
本当に分かってんのか、その言葉の意味。

「喋れるなら何で今まで黙ってたんだよ」
「その手の質問は最初にしてくれないと答える気にならない。機会を逃したな」

はいはい、分かった。もうどうだっていいや、お前が口をきける理由なんて。
こいつと居るうちに、自分の犬のイメージが崩れて跡形も無くなってしまった。

人懐っこくないわけじゃないが、距離を取ってつかず離れずだ。
飼い主への忠誠心が深いらしいけど、こいつのどこにそんなものがあるのか分からん。
挙げ句はさらりと言葉を話してるし、もう何が起きてもきっと驚かないと思う。


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