Crimson in the Darkness -来臨-U-1
あのヴァンパイアの一件からもう1ヶ月以上経つ。
怪我らしい怪我も無く、オレはその日に退院を言い渡され、いつも通り家に帰った。案の定、リーも家に居たし、シエルも居た。
シエルから聞いた話では、あの公園でオレは血だらけで気を失っていたらしい。リーもシエルに気付くとそのままぶっ倒れた、と。
夢でも見てたのかと思うけど、実際、血に濡れた服を見たときは『現実』だと思い知らされた。
でも、何で傷一つ無いんだ。オレ一人しかエクソシストはいなかったし、傷を回復させるような“力”は持ってない。そんな力を持ってるのは巫女の中でも限られた奴らだけだ。こんな偏狭の島国にいるわけが無い。
なら、リーが?
そう思うものの、訊いてみてもアイツは『解からない』の一辺倒。全くその辺のコトに関しては“知らない”らしい。
その辺の話をあの爺さんに報告すると、酷く怪訝な顔で本国に電話していた。
本国なんかが首を突っ込んでくるなんて、ロクなコト無い。ホント、面倒なことこの上ない。
「アーク?」
「…………何だ?」
「すっげぇ怖い顔してる。どしたの?」
この先のコトを考えると、頭は痛えし、ややこしい気がした。どうやらそれが顔に出ていたのか、リーが少し距離を取って、声を掛けてきた。
「何でもねぇよ。今日は仕事が他にもあるから早めに行ってくる。ちゃんと寝てろよ。…………その石、絶対に身体から外すなよ」
リーの首に提げられている黒い石のペンダントを指差して、一応念押ししておく。オレの言葉にリーはペンダントトップを手を添えた。