Crimson in the Darkness -来臨-T-3
「襲われちゃうよ? 結構ケモノだからね。アークって。見てて解かるでしょ?」
「ケモノ?」
ケモノってなんだ。だから、ンなコトをガキであるコイツに言ってどうするんだよ。
「…………シエル……、ガキに何言ってやがる」
「気をつけなよ? リーちゃん」
『食べられちゃわないようにね?』そう言いながら愉しそうに笑って、シエルは満足そうだ。
ギョッとした顔でオレを見上げたリーは一歩後ろへ下がる。
「え゛っ? 食べるのか!? アークって人間じゃないの!?」
「ふざけんな!! オレは人間だ! シエル、余計なこと言ってないでさっさと帰れ!」
どう言う意味だ?
あんなモンに追われてるから警戒すんのは当たり前だけど、オレが人間じゃねーように見えるのか?
「ありゃ、怒らせちゃったね。じゃ、帰るよ。またね、リーちゃん」
のんびりと玄関に向かうシエルを追い立てるように、後ろを歩く。靴を履き終えたシエルはオレの顔を見ると、いたく真面目な表情で口を開いた。
「あ、そうだ。忘れてた。今日、本国からお客さんが来るから、早めに教会に来いっていう伝達あったんだ」
「あ? 本国?」
『本国』――オレやシエルの所属する正教会が本拠地としている国のこと。つーことは……
「うん、なんか、お偉いさんが来るみたいだよ? 先日の件について詳細を本人から聞きたいんだってさ」
「はっ、メンドクセー」
溜息と一緒に本音が出た。
事態はこっちの知らないところでデカくなってるってことか。気に入らねーな。