生徒会へようこそ【MISSION'2'ハムをスターにせよ!】-5
「あ〜…」
しかし、苦笑いを浮かべたハムさんは煮え切らない返事をする。
「特訓…か」
「そう!特訓!」
究極の対局に挟まれて、とても居心地が悪い。
「宝 寿絵瑠と特訓って…何すんの?」
下心丸出しだけど食い付いたからオッケーかな。
「そうですね。とりあえず、毎回2キロのランニングと腕立て腹筋を100回ずつ。あ、そうだ、ダンベルもやりましょう。それと寿絵瑠が打ち出す拳を避けてもらいます!」
立てた人差し指を顔の横に持ってきて、美しく微笑む。
その向かい側のハムさんの顔が青いこと青いこと。
そりゃそうだ。下手したら宝さんにボッコボコにされるし、最も嫌いな持久走まで…。
今ハムさんの頭の中じゃ宝さんと逃避が天秤に掛けられてるんだろうな。
「…宝 寿絵瑠には悪いけど遠慮しとくわ」
どうやら逃避が勝ったらしい。
「何故ですか!辛いのはあなただけじゃない!寿絵瑠も優も同じ苦しみを味わうのですよ!?」
…え!?そうなの!?
「えと、宝さん…?僕も?」
「当たり前だろう!?何度も同じことを言わせるな!!」
えー!?
何で僕のことなのに、僕の意見は無視されるんだ。
そんなのハムさんじゃなくても地獄だって…。
「いや、まぁ…でもホラ、俺じゃ絶対無理だと思うんだ。こんなだし」
そう言ってハムさんは太鼓のようなお腹を撫でながら、眉をハの字にして笑った。
「だからさ悪いんだけど、特訓は無しってことで」
僕らの脇をハムさんがスッと通り過ぎて行く。
心のどこかでこうなるだろうとは予想されていた。
やっぱりオッさんの言った通りだ。
僕は遠くなる背中を見つめていた。
「………ま」
え?
不意に変な声がして僕は横を向く。
「ヒッ…!」
俯き気味な宝さんの目は、それでも前をギンッと睨んでいてむちゃくちゃ怖かった。
よく見るとギュッと握り締められた拳がブルブルと震えていた。
何だ何だ!?
「…キィサァマァァァアアアアアッ!!!!」
宝さんが駆け出す。
ワンテンポ遅れて僕も後を追った。
僕より圧倒的に足が速く、差が縮まらない。
そしてとうとう僕の目の前でそれは起こってしまった。
ボグッ!という鈍い音をたてて宝さんの飛び蹴りがハムさんの背中に直撃した。