唯高帰宅部茜色同好会!(第一章)-3
「ルールとはいえ、本当に構わないのでしょうか」
「ん、気にすんな」
そう言って申し訳ない顔をしているのがアイサ。
その今時珍しい丁寧な言動から年上に見えて、最初は藍さんとみんな呼んでいたものの、あだ名が欲しいという希望でアイサに。
休日は剣道場に通う古風な女の子。
とまあ、そんな感じで、このメンバーで毎日楽しくやっている。
…まあ俺のことはどうでもいいんだけど、みんなからアッキュって呼ばれてる。
理由は本名のアキラをいじってアッキュ。小学生のときにキスケがつけたあだ名だ。
サキだけはアッキュンなんて言うがそれは恥ずかしい。
気付くとこの集まりのリーダーに任命されていた。ツッコミ役。
あ、そうだ、最後にこれだけ。
いつの間にやら勝手に部とか同好会とか名乗っている俺達だけど、“茜色”っていう言葉にはそれなりにこだわりがあった。
この街は小高い丘の上にある。
その中でも一番高い所にあるのがこの学校で、ベランダからは街並みだけでなく、徒歩では行けないような先にある海まで見えるのだ。
メンバー全員、放課後になると窓から入ってくる茜色の夕焼け空が綺麗で大好きだった。
だから夕日が海に沈んでいくのを眺めてから解散するのが日課になっている。
そこから“茜色”という言葉が、この集まりの呼び名の一部に使われた。
「…おっ」
「今日は雲一つないから綺麗だね」
「だいぶ陽が延びるようになったもんだ」
「もうすっかり春ね」
「……」
「…美しい」
そうして今日も、茜色の空は俺達の前に現れたのだった。