Crimson in the Darkness -権與-V-7
「何処行くんだよ!」
「あ? 部屋に戻んだよ。ここにいてもしゃーねーだろうが」
リーの手を適当にあしらって、部屋のドアを開ける。一歩、病室の外に出ると、再び追いかけてくる。
「ちょっと待てよ!」
また、オレの腕を引っ張ってきた。だから、何も話すことねーっての。
「着替えてるっとことはお前、もう帰れるんだろ?」
それって退院許可出たってことだよな。
「だから、帰るとこ……」
知ってる。だから―――
「さっさと家に帰ってメシでも作ってろ。鍵ならシエルに預けてあっから」
緊急用に預けてあるんだよ、そう言えば。忘れてたけど。それ持ってけば、家に入れるだろ。
「っ! いい……の、か?」
「良いも悪いも、このままお前が出て行ったら、オレが後味悪いだろうが。アイツもウルセーし」
「……ホントに……? おれ……だって…………」
「教会に近いトコに居た方が良いだろ。あんなのに追われてんなら、尚更な」
別に、それだけが理由ってワケでもないが、ま、それ以上言う必要も無えだろ。今んトコは。
そう思いながら、リーの頭を撫でてやると、いきなりしがみ付いてきて、小さな身体を震わせ始めた。
「!! アークー!! うーーーっ」
「だから、泣くなって!」
おい、視線が痛いぞ。このご時勢、ガキ泣かせてる大の大人を見つけて、平静と見過ごすヤツなんか居ないだろ。今、完全にオレ悪者じゃねーの?
他人の振りしながら後ろで笑ってないで助けろよ、馬鹿シエル。