Crimson in the Darkness -権與-V-6
「何だよ!?」
「怪我人の腹、殴るとはいい度胸だな? クソガキ」
「はあ!? どこが怪我人だよ! 傷一つ無えって医者が言ってたぞ!」
「…………。腹の穴、無いんだよな……」
やっぱりおかしい。あン時、確かに腹に穴があった筈なんだ。しかも、かなりの出血もあったのに。なんでこんなにピンピンしてんるんだよ、オレ。
「何言ってんの? 穴なんかあったら死んでるだろ」
「お前、オレに何した?」
「は?」
『何言ってんの?』とリーは目を丸めた。
「あれからどうなった?」
「あれから? アークが結界張ってから、ずっとアークは寝てた」
「ンなワケあるか。お前、ギャンギャン泣いてただろーが」
平然とそう言われて、オレは有り得ないと否定した。
「知らないよ! 直ぐにシエルが来てくれたし! おれも倒れちゃったから解かんない」
「…………そう、か」
なら仕方ねぇ。これ以上、コイツに聞いても駄目だってことだな。なら、シエルにでも聞くか。
「じゃあな」
くるっとリーに背を向けて、ドアの方へと戻って行ったら、リーが慌てて駆け寄ってくると入院着の袖を引っ張ってきた。
また泣きそうな顔で、見上げてきた……。だから、それ、止めろって。