Crimson in the Darkness -権與-V-5
つーか、ここ病院じゃねーか。白い廊下に消毒液の臭いが充満してるし、見慣れた造り。何度か仕事でしくじって入院したことあるな。
てことは教会に保護されたんだな。胸のなかに言い知れぬ安堵感が漂う。それでも足は止めずに隣室のドアノブを握って、ノックすらせずにドアを開け放った。その向こう、オレがいたのと同じ造りの部屋の中。赤い髪を揺らしてこっちを見て、目を丸めたリーの姿が目に入る。
「っ きゃあああああっ」
…………『きゃあ?』
「ア、アーク……ノックしろよ!」
いや、待て。着替えてたのは解る。けど、何だ……その姿は。
「何だよっ 何か言えよ! 馬鹿アーク!」
リーよりもオレの方が驚いたらしく、最初に何を口にすれば良いのか解らないでいると、こいつは相も変わらずの口の悪さに我に返った。
「…………お前」
「何だよ?」
「女だったのか?」
「…………」
「悪い、男だと思ってた」
つーか、女に見えない。いや、12やそこらのガキじゃそんなモンなのかもしれんけど。流石にスカート姿なら間違えない。見る見るうちに真っ赤になったリーはズカズカと近づいてきた。
「〜〜〜〜〜っ こンの馬鹿エロオヤジ!」
「いっ…! オイッ!」
振り上げた拳で思い切り、全力で人の鳩尾を殴りやがった。まだ殴ろうとするリーの腕を引っ掴むと、涙目のまま睨んできた。