Crimson in the Darkness -権與-V-2
「そうか? そいつ、タバコ吸うし、酒飲むし、臭いぞ」
「…………臭いはよけーだ……クソガキ」
憎まれ口が聞けるとは思わなかったな。……くそ……痛ぇな。腹が……呼吸もしづらくなってきた……。踏みつけられている背により強い力を感じたと思ったら、ミシッという音と鈍い痛みが全身に駆け抜ける。
「っ」
息を詰まらせ、咳き込んだ途端に赤い液体が飛び散る。
「アークを離せっ」
今までに無い焦った声と、酷く研ぎ澄まされた殺気を感じる。
『そうだな。…………お前が我らに殺されるならな』
「…………なら、くれてやる。こんな命で良ければ、持っていけよ」
不甲斐ないにも程があるだろ。クソガキの命と引き換えだと? ンなモン、こいつらが守るわけ無いだろうが……馬鹿。
「馬鹿ガキ! 大の男がクソガキに助けられるなんッて……笑い話にもなんねえんだよ!!」
漸く完成した血の魔法陣に思い切り霊力を叩き込んだ。
魔法陣を中心に目映い閃光とともに強烈な力の波が発生し、闇の者を一定の空間外に弾き飛ばす――最上級聖光防御結界。
結構な霊力を消費するから滅多に使えないんだけど、背に腹は代えれねえ。
『ガアッ』
「っ アークッ!?」
意識が光と静寂に包まれる。