Crimson in the Darkness -権與-U-6
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馬鹿みたいだ。
全部が全部、皆が皆同じとは限らない。この世界で『孤独』になって泣かずに居れる訳が無い。泣いても現実は変わらないって解かったら泣かなくなったけど、オレだってガキの頃は泣きたいくらい寂しいと感じた。
人前で泣くくらい弱いのに、リーがオレと同じくらい強いって思ってた。何でだ……何でそう思ったんだ。生意気で口が達者だからって心が『強い』とは限らないのに。ただ『強がって』るだけなんだ。
陽が沈んだ暗がりの中、仕事もほっぽりだして、街中を駆けずり回った。それでも、結局見つからず。しかも、寝不足が祟っていつもよりも身体が疲弊するのが早い。通りかかった公園のベンチに座って、呼吸を整える。
気が付けば、夜の帳が降り、三日月が昇っている。
「クソッ」
あのチビ、何処に行った? 出て行ってから半日、冷静に思えば子供の足でもこの街は出れる。行く所が無い、でも、それは裏を返せば何処に行くのも同じなんだ。ここに居ようが、他の街に行こうが同じってことだ。
「…………居ない……か」
諦めかけたその瞬間、本能的に身体が動いた。そして、一瞬遅れて、耳に届いたのは乾いた音。
「おいおい……馬鹿力だな」
さっきまで座っていたベンチは跡形もなく砕けて、それどころか地面に大穴が作られてる。砂埃の中、地面から這い出してきたのは――女。
見た目は悪くない、スタイルも良いし、真っ黒い髪が風に靡いていて、綺麗だとは思うが…………如何せん、目がいけ好かねぇ。
「いい目してんじゃねーか」
真っ赤に輝く瞳の中に黒い瞳孔が縦に走る。―――魔物の証だ。女は真っ赤な唇で弧を描くとオレ目掛けて突っ込んでくる。