Crimson in the Darkness -権與-U-3
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あれから、1週間。リーとは顔を合わせてもダンマリか無視。呼びかけても、尽く聞き流される。夜は帰ってきた頃にはベッドに潜り込んで狸寝入りか爆睡。元々一日で顔を見る時間なんかほんの1、2時間程度なんだけどな。ただ、まあ、意固地になって無視してる割には、メシや洗濯はいつも通り済ませてくれてる。
頭が痛い。
家の空気がギスギスしてるのも一つだけど、寝ようとするとあいつの泣き顔が浮かんできて、眠気が一向にこない状況がずっと続いていて、完全に寝不足だ。
「アーク。…………まだ喧嘩中?」
夕方の礼拝堂、珍しく誰も居ない。そんな堂の長椅子に座って、痛む頭を休ませようとうたた寝してたら、シエルがいつの間にか隣に座っていた。
「…………喧嘩じゃねえって。あっちが一方的に怒ってるんだ」
「怒らせるようなこと言ったのはアークなんでしょ?」
冷静にいつもの如く、窘められた。でも、全く――……
「…………解からん」
「心当たりなし?」
「無え」
何度考えても、覚えがない。だから、すんなりと首を横に振った。なのにコイツはわざとらしく盛大な溜息を吐いて、呆れた目でオレを見てきた。
「ホントに? アークって口が悪いから、何気ない言葉で傷つけちゃうんだよねー?」
そうか? そうだったか? 覚えてないな。ただ、1週間経って、ふと、思い出した。
「………………なあ、帰る所が無いのって寂しいか?」
「ん? アークは……そうだね、帰れるトコロがあったのに、それが無くなってしまったら、きっととても悲しい」
「そうか……」
オレには帰る所なんて無いから、そんなの解からないけど、シエルが言うんならきっとそうなんだろう。
傍で『ホント、自覚なしってどうなんだろうね?』と笑いながら言ってるコイツも中々の毒舌家でもあるんだけど。
「はあ、メンドクセエな。ガキの相手って」