Crimson in the Darkness -権輿-T-9
「素性は?」
「さあな。オレには何にも教える気はないらしい。『しばらくしたら出て行く』って言ってるしな」
オレとアイツは別にナカヨシじゃねえ。ただ、しばらく寝床を貸してやってるだけだ。
「この御時勢で子供一人とは……な」
「言われなくとも解かってる」
「そうか。なら、下がっていい」
聞き出せってことか。あいつが口を割るか? 口だけは達者だからな。無理じゃねーの?
「ちっ。メンドクセェな」
*****
月は表情を隠し、星だけが疎らに浮かぶ闇夜に、常人には見えない異形が無数に空に舞っていた。
「何だよ、この低級魔族の群れは……」
「新月だからじゃないかな?」
一人でぼやいたら、隣で冷静な声が返ってきた。
「何、その目。僕に文句あるの?」
オレとそう年の変わらない黒髪の男が不満そうにした。