Crimson in the Darkness -権輿-T-6
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夕暮れの空の下、傾いた赤い陽で伸びた二つの黒い影。
一つはちびっちゃく、でかい方の影に纏わり付くように周りをぐるぐると走り回ってる。…………コイツ、犬?
「なあ、なあ。何処にあんの? アークの仕事してるトコって」
「あ? ホンキでついてくんのか?」
「『勝手にしろ』って言った。だから、勝手に付いて行く」
「なら、勝手に喚いてろ。バーカ」
「馬鹿、言うな。バーカ」
クソガキ。今更、どうこうする気もないけど、笑ったら殴るからな。
「…………あそこだ。馬鹿ガキ」
街の外れにポツンと佇む、白い外壁で囲まれた青い屋根の建物をオレは指差した。
「………………」
それを見上げたリーはピタッと足を止めた。それに気付くと、こっちも自然と足が止まる。
「どーした? 馬鹿ガキ」
「…………なあ、アークってあそこで働いてんの……?」
「あ? ああ」
「………………おれ、帰る。仕事場見れたし! じゃあな!!」
クルッと踵を返して、リーは来た道を走っていく。