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昏い森
【ファンタジー 恋愛小説】

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昏い森-7

森羅は強い。

この森で圧倒的な力をもっている。
恐らく、黄昏も森羅に食べられたのだろう。

王者に相応しい雄々しい風格と絶対的な力。そして少しの狂気を持ち合わせていた。


とても暗夜に敵う相手ではない。


暗夜は結び目だらけで、解けなくなったような複雑な思いを払うように一つ頭を振り、またうとうとと眠りの縁へ誘われた。


溶けるように眠って、暁のことなど忘れてしまえばいいと思いながら。



遠くで、暗夜を呼ぶ暁の声が聞こえた気がした。



「お前は馬鹿なのか」

夜になると、今日も森羅は暁の前に現れた。
銀色のさえざえとした毛並みはやはり美しく、森羅自身が淡く発光しているようにもみえる。

「昨日の言葉を忘れたか。他の妖に構うなと言ったはずだ」


身を一つ大きく震わせ、森羅は獣から人へと姿を変えた。


「森は俺の庭だぞ。気付かないとでも思ったか」

黙ったままの暁に近付いて、森羅は意地悪く笑った。



「…暗夜に会わせて」

森羅の黄金色の瞳を見つめて、暁は震える声を絞りだした。

森羅であれば、暗夜の居場所くらいすぐ分かるだろう。


「…やっとしゃべったかと思ったら、お前は正真正銘の馬鹿のようだな」

狼の声が低くなる。


「暗夜に会いたいの。一目だけでも。会えたら、もう暗夜のことは忘れる。貴方の贄になるから」


森羅は半眼で暁を睨むようにみつめた。
考えるように口許に手を添えている。


「一度だけでいいの。…お願い」


暁の声がざわりと森羅の心をかきみだす。
黒い霧のような感情が森羅を覆い尽くそうとする。


…いっそ暁も暗夜も皆、殺してしまおうか、そんな思いがよぎる。



森羅はそれ切り、何も言わず、森へと姿を消した。


暁はその後ろ姿をただ見えなくなるまで目で追った。


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