けんぽなし〜オトナ〜-3
ー………
「…歩(あゆみ)」
「歩って…あの歩?」
「んー…多分…」
確かめるように聞く耕太郎に曖昧に返す砦…
「見たって?どこで?」
耕太郎、カップラーメンにお湯を注ぎながら言った。
「…ホテル…街…?」
ー……え……
「…おっさんと歩いてた…歩って呼ばれてたからさー…気になって…何度か見かけたんだけど、違うおっさんだったからなー…」
ー……そ…それって…
「援交?」
ドクンっー
太一の言葉で息がつまる…
「んー…まぁ、断定は出来ないけど…」
言葉を濁す砦…
「今夜、行ってみようか?その…歩見かけたっていう近辺…」
耕太郎の提案…
「私、行く!!」
速さを増す鼓動を感じながら、私は耕太郎に言った。
それは…本当に…歩なのだろうか…
そういうことをやってる子がいるというのは、テレビでは見たことがある…だけど、現実感は感じられず…
どこか、遠くの…例えば、ドラマの中の世界のような感覚だ…
耕太郎の提案に同意したみんなは一旦帰ることにした。
「…瑞樹、お前、本当に行くのか?」
!!っドキっー
太一の家を出た私の腕を掴んだのは、空だった…
「…な…行くわよっ、…何?…」
ーな…何なのーー…何よ〜…
「…いや……」
そう言うと空は無言で背を向けた。
ーな…何よー…
鼓動が収まらない。
真剣な表情の空の顔…
低いトーンの空の声…
あの時の、あの表情の空が頭をよぎる…
時々…
私は…
空が怖い…
待ち合わせに集まったみんな…
私は空を避けるように耕太郎の影に隠れた。