ドSなお方は書記さんだ!〜金峰学園生徒会議事録其の2〜-4
「何もしない。」
『?』
「今回、あたしたち生徒会は何もしない。この後は各自自由にしててよしっ!…あ、千秋さんは、
予算案のリストの作成、お願いしますね。」
そう言って、小春は席に着いた。
…現状維持…か。それも、いいかもしれない。
今、変な活動をしている部活には、このままの部費を通し、活動レポート次第でまた部費を下げることになるかもしれない。そうなってから、自分たちの行っていたことを振り返って反省させるのも1つの手だ。
――――こんな風にしていると、また、全校生徒から「やっぱり今年の生徒会は何にもしないね」
と言われるかもしれない。けれど、これはあくまで生徒会の、生徒会長、片瀬小春の下した決断なのだ。
俺たちは胸を張って堂々としていればいい。
そんなことを考えながらボーっとしていると、不意に「はやた。」と、声をかけられた。
「なんだよ?」
「あの、さっきはありがと、ね。」
「へっ?」
「さっき、はやた、『どうしても無理だったら俺たちに相談すれば…』みたいなこと言ってくれたじゃん。」
「お、おう。」
「あたし、はやたにああ言ってもらえたから、堂々と宣言できたんだよ。本当に、ありがとう。」
「――――――――――っ…」
(6)
やべぇ。やべぇぞこれ。何だこれ。
何か若干、小春の俺に対するポイント上がってるぞ。
――――小春は無邪気な性格だから、こういう事だって何ともない風に言ってくる。
だから、何か無性に照れてしまった。
すると、俺が顔を赤くしていたところを他メンバーがここぞとばかりにいじって来た。
「おっ?颯、顔赤いぜぇ〜〜〜〜〜?」
「なっ、んなわけな…」
「先輩達…お似合いですねっ!」
「冬香ちゃんまで何はやし立ててんだよっ!?」
「ひゅ、ひゅー!」
「子供みたいな囃し立て方が逆にきついっ!」
「高くん…。…………。(ニヤニヤ)」
「無言が一番きついッ!しかも何かニヤニヤしてるし!」
俺が必死で言い訳していると、だった。
「はやた、また顔赤くしてるよ?…やっぱり風邪なんじゃない?無理してるんなら、早く言ってくれれば良かったのに。」
小春が俺を気遣ってか、声をかけてきた。
「あ、ち、違うんだ。これはその、つまりだな…」
「?」
きょとんとした表情。愛くるしい瞳。「どうしたの?」と、早く理由を聞きたそうにしてる仕草。
――――――――――そんな事されたら、恥ずかしくって余計言えなくなっちまうじゃねーか。
「いや、何でもねーよ。何でも。うん。」
慌てて話を終わらせると、俺は意味も無く立って鞄の中を少しかき回したり、千秋さんの作っている予算案リストを覘きに行ったりして、気を紛らわせていた。
そして、少し落ち着いてきた頃、ふっと窓の外を見てみた。
雲一つ無いすっきりとした青空をバックに描いて、桜の木は、鮮やかなピンク色の花を咲かせていた。時折、強く、優しいような風に揺らされる枝から、儚げに花びらが散っていく。あのピンク色の花を見るたび、俺は小春のことを思い浮かべていた。
―――――小春が、桜の季節になるたびに少し悲しそうな顔をしている事。
―――――小春が、桜の季節になるたびにケータイの画面を見つめては溜息をついていること。
―――――そして、あの時、小春が、俺の前で初めて涙をこぼしていたこと。
その辺については、確か、小春がこことは別の場所で語ってたり語ってなかったりする。
詳しいことを知りたい人はそっちを参照してくれ。何でここでは言えないかっていえば。
―――――これは、俺の口から軽々しく語っていい事ではない。……それだけだ。