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【家族 その他小説】

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「よし虹太!ここ掘れ!」

「へ!?」

はぁーはぁーと肩で息をする。

「やぁもぉ、どんだけチキンだよ。早く。間違い無いから」

姉ちゃんが腕組みをして、つま先でトントンと場所を示す。

「や、だってここは…」

「は?何?」

「だってここ…」

「いーから。ホレ、ここね。さっさとやる!」

キシシッと姉ちゃんが悪戯っ子のように笑った。
俺は仕方なくしゃがみこんで、そっと枯れ葉を掻き分けて行く。
呼吸はますます荒くなる。じんわりと身体中に冷や汗をかいているのが分かった。
表面を覆う枯れ葉が無くなると、ふわっとした柔らかい土に到達した。
急だったので軍手もなく、俺は素手で掘り進める。

「虹っていいよねぇ。虹太もそう思わない?」

頭上から声が振ってくる。
ポタリと雫が手元の土に染みていった。
俺は泣いていた。

「ね、姉ちゃん、俺もう…」

「…つべこべ言うな、チキン」

相変わらず姉ちゃんは厳しい。一オクターブ低いドスのきいた声でそんなん言われたら、手を動かす他ないじゃないか。
俺に拒否権は無いのだから。
ポタリポタリと地面が湿っていく。

「ねぇ虹太」

姉ちゃんが穏やかに俺の名を呼ぶ。
当時のことが鮮明に頭をよぎる。
ああ、いやだ。
ここにこれ以上いたくない。
今すぐ飛び出したい。でもそんなことしたら、姉ちゃんにぶん殴られる。
だけどもう無理だ。限界だ。

「…姉ちゃん、もう無理だよ」

だって。
だってここは。
この場所は。
ギュウッと目を固く閉じる。

「姉ちゃん、虹大好き!」

「ここは姉ちゃんが殺された場所だから…!」

指に細長いものが絡んだ感覚。
それと同時に俺と姉ちゃんの声が重なった。
一瞬まぶたの裏に浮かんだ姉ちゃんの顔は満面の笑みだった。
ハッとして目を開ける。


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