虹-2
「その宝物、虹太に見っけてもらおうと思って」
それがさも当たり前であるように姉ちゃんは笑った。
「いやいやいや」
俺はすぐさま反論する。
「いやいやいや、じゃない!姉ちゃんのために頑張れ」
「つぅかさ、虹出てないじゃん!無理じゃん!」
「無理じゃない!気合いで頑張れ!」
「そもそも、何それ。言い伝え?噂?全然知らないけど」
「え、知らないの?ダァッサ…」
いくら姉ちゃんとは言え、ぷっと笑われたらしゃくに障る。
「とにかく、虹太は姉ちゃんの後についてくりゃいいの!」
「……はいはい」
この女王様気質は昔から変わらない。
俺は諦めて、大人しくついて行くことにした。
それから程なくして、姉ちゃんは家の裏にある雑木林の入り口で足を止めた。
「はーい、ここでーす!ここに宝はありまーす、たぶん」
語尾のたぶんがすごく引っかかる。
「ここ?」
「そ。たぶん」
今日は朝からどんよりとして、今にも雨が降りそうだった。
そんな天気の時の林の中は薄暗くて不気味だ。
「さ、行くよ」
「あんまり行きたくないんですけど」
「はー?何?もしかしてまだちっちゃい頃の肝試しのトラウマ残ってんの?」
あれは姉ちゃんが面白がって俺を一人にしたのが悪い。
「それもあるけど、でも」
「でもじゃなーい。さっさときなさい、チキンボーイが!」
姉ちゃんがチッと舌打ちしながら、早くしろよと俺を顎で促す。
「…わぁかったよ!」
俺は過去を打ち破るように一歩を踏み出して、姉ちゃんの背中について行く。
歩みを進める度に心臓の音が大きくなり、呼吸すら出来なくなってくる。
トラウマというのは何と厄介なものなんだ。
ギュッと握り締めた掌には汗が…。
ふと、姉ちゃんが立ち止まる。