邪愁(その1)-1
…あなたが望んだとおり、わたしはラビアピアスをしているわ…
でも……わたしがあなたのものになったとき、わたしは、あなたを必要としなくなったのよ…
私の手には、まだ熱をもった拳銃が握られていた…。
高層マンションの窓の外には、砕かれた宝石の破片のような街の光が煌めいていた。
光が渦を巻きながら淫猥な彩りを放ち、私の濡れた漆黒の繁みを撫でるように性器に忍び込んで
くるとき、私はあの密林の甘く濃厚な精液の匂いが恋しくなる。
永遠に目覚めることのないあなたは、冷たい唇をしたまま、まるで眠っているようだった。優雅
な肘掛け椅子に深く沈めたあなたの裸体は、琥珀色の灯りに包まれ、私が撃ったペニスが美しい
血で艶やかに染め上げられている。
あなたが私の誕生日に贈ってくれた銀色のラビアピアスが、私の蜜液に濡れたように瑞々しい
光沢を放っているのが窓ガラスに映っている。その澄んだ氷のような光が、私にかけがえのない
疼きをもたらすようだった。
私だけのペニスのはずだった…しかし、決して私に与えられなかったペニス…その与えられない
渇きに飢えるとき、私はなぜかラビアピアスに夢を見たのかもしれない。
わずかに開いた窓の隙間から忍び込んでくる夜の冷気が、私の火照った裸体を優しく包み込む。
琥珀色の灯りの中に、夫の腿に流れ出た懐かしい精液の匂いが漂っている。薄くとらえどころの
ない匂いだった。私は、もっと濃厚で甘い果実のような精液の匂いを嗅ぎたかった。
欲しい…私は欲しいのだ…子宮の奥底から滲み出てくるからだの疼きは、再び私をあの密林の
毒々しい絵の具を溶かしたような茜色の空へと導いてくれる…。
…その女を愛しているって…嘘だわ…そんなことをあなたが言うはずがない…
ただ、あなたは、若い女の肌が恋しいだけだわ…もうあなたは、わたしの肌を忘れてしまったで
しょう…そうに決まっているわ…
…その若い女とセックスをしたの…笑ってしまうわ…あなたはふつうのセックスなんて興味がな
いのよ…あなたは、縛った女の肌に振り下ろした鞭の痕に欲情し、勃起したペニスをきっと満足
そうに眺めているにちがいないわ…
…あなたは、ただ鞭にふさわしい若い女の肌が欲しいだけなのよ…そうでしょう…わたしが鞭を
嫌がったからよ…今もそこには、あの女がいるんでしょう…