あべ☆ちほ-3
「僕にはいい人に聞こえるけど…」
「きっと、いい人なんだよ。ただ私の好き嫌いが激しいだけで。酢豚のパイナップルもボディービルダーもパパの再婚相手もみーんな許せないんだもんなぁ」
「なにをされたってわけでもないのに?」
「そ。なにをされたってわけでもないのに。……君は?」
「なにが?」
「パパを殺してやるって思ってるんでしょう?」
「いや、僕が殺すまでもなく死んじゃったからね。僕のパパは」
千穂は途端に傷ついた表情して、
「こういう時って、謝った方がいい?」
千穂は主人の機嫌を伺う仔犬みたいな視線を向けてくる。
なんか、そういう視線で見られると背筋がゾクゾクする。
手酷く虐めてやりたくなる。
「千穂が謝りたいと思ったんなら謝ればいいよ。好きなようにすればいいんだ。千穂の人生だもの」
けど結局放置プレイにした。
伏し目のまま、叱られた子犬みたいに千穂は続ける。
「……その。どうして死んじゃったの、って聞いてもいい?」
「うん。インフルエンザ。ポチにうつされたんだ」
「犬に?」
「豚」
「ぶたっ!?」
「そ。豚のインフルエンザは人にもうつるんだよ。千穂も気をつけて」
「……ありえなー」
そんな会話があった。
*
ちなみに父にはなんの恨みもない。真面目で実直な良き父だった。
言葉のあや、というか、親父を恨むオトコノコってのを気取ってみたかったというか。
とにかく、恨んでないので安らかに眠れ。父よ。