このかけがえのない世界へ4-2
この都市からゴミは絶対に無くなりません。不可能です」
「でしたら、なぜゴミ拾いをしているのですか?」
「進学に有利だからです」
彼は悠然と答えた。
「僕たちは皆、将来役人になることが夢なのです。
そのためには、難関校に合格しなければいけません。
そして、その難関校の試験には学力はもちろん、どれだけ人に貢献したかも入学評価の基準となるのです」
彼は持っていた鞄の中を探ると一枚のカードを取り出した。
「このカードには自分が今までしてきたボランティア活動について記録されています。
そしてこれを入学試験時に提出します」
「なるほど。だからあなた方はボランティア活動をするのですね」
「そうです。自分自身の評価を得るために」
彼は二人に微笑んだ。
「では、私たちはもう行きます。
お話、ありがとうございました」
眼帯の人がお辞儀をすると、少女もそれに倣ってお辞儀をする。
「はい。それではお気をつけて」
「そちらも、お仕事頑張ってください」
眼帯の人がそう言うと、二人は再び歩き始めた。
「…仕事ではないと言ったのですが…」
二人が去っていく姿を見ながら男性は呟いたが、またすぐにゴミを拾い始めた。
無くなることのないゴミをひたすら拾い始めた。
「無償、ではない」
しばらく歩いて少女が呟いた。
「何がだい?」
「さっきのゴミ拾い。無償ではない。
だから、あれはボランティア活動ではない」
「そうだね、アル。
ボランティア活動なんて不可能だよ」
眼帯の人と、アルと呼ばれた少女は歩いた。
ゴミだらけで異臭がどこまでも漂っている道をひたすら歩いた。