『Scars 上』-26
「すみません、気が緩んでました!」
直立して、手下が俺の支持を待つ。
「……いい。気にするな」
「追わないんですか?」
「ああ。今日はもう遅いしな。お前らも疲れただろう?」
そう声をかけてやると、他の手下達も駆けつけてきた。
「すっげーバトルでした!」
「世の中には強い女もいるもんスね」
手下達は皆、興奮したように顔を上気させている。
「俺の個人的な喧嘩に巻き込んで、すまなかったな」
「いえ、勉強させてもらったっス!」
この忠誠心はどこからわいてくるんだか。
髪を荒々しく逆立てたり、眉毛をそり落としたりしている手下達。
そんな不良たちが興奮している様は、不気味だった。
それでも、悪い気分じゃない。
「そこに転がってる役立たずどもを起こせ。撤収するぞ」
まだ伸びているレイとユウジを見やりながら言う。
風が吹き始めた。
慌しく撤収の準備を始める手下達。
俺は、自分の胸が高鳴っているのを感じた。
なんなんだろうな、これは。
見上げた夜空には、月だけがぽつんと浮かんでいて。
あれだけ動いたのに、今夜はあまり眠れそうにない。
胸の奥に疼く微熱を持て余してしまいそうで。