双子の姉妹。 8-3
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「…どした?」
勉強中、麻琴の視線を感じて声をかける。
「……俊哉ってさー、その、あの、近くで見ると意外と顔いいわよね」
「…なに言ってんだお前」
「べっ…別に……そういえば俊哉、あの女とはどうなったのよ」
正直、雑談する時間も惜しいのだが、そろそろ休憩を入れてもいいか。
「香織か、どうも?」
「どうもって…付き合わないの?」
「言ってなかったっけか。んー…まあ告白紛いなことはあったけどな、結局何もなく終わったよ。俺からすればあいつは親友みたいなものだし」
「ほぇー」
「変な顔で見るなよ」
「……俊哉はさ、その、彼女いたことあるの?」
麻琴のやつ、どうしたんだ?
「!」
だがすぐに閃いた。
おばさんが言ったとおりだと、麻琴も俺のことを好きでいてくれているんだ。
探りを入れてきたんだな。
もう俺は鈍感じゃないぜ。
「いないな、勉強一筋で生きてきたし」
「理由は知ってるから勉強一筋っていうのには何も言わないけどさ、その言い訳はかっこつかないわよ」
「うるせ。そういうお前はどうなんだよ、華の女子高生」
その瞬間、麻琴はかあっと顔を赤くした。
「い…いな…いないしいたこともないわよ」
「ほー、じゃあ好きな人はいないのか?」
鈍感じゃなくなった俺にはこんな駆け引きお茶の子さいさいだぜ。
「好きっ…な…人…ねぇ」
あからさまに動揺すんな。
「いないのか」
「いるわよ!!」
「そっか、誰なんだ?」
「誰!?」
あー、面白い。
もう麻琴の顔は真っ赤だ。
「俺の知ってるやつ?」
「へ?あ…そうよ!」
麻琴は多少落ち着いたのか胸を張る。
こっから優位に立とうという顔だが、そうはさせない。
「じゃあ伝えてやるよ、誰だ?」
「ひぇ!?」
なんて声を出すんだ。
俺とお前には共通の知り合いなんていないだろうが。
でも、今は何もかもわかっているからこそ、麻琴の一挙手一投足が可愛く見える。
俺にも余裕が出るし、あのときは驚いたが、おばさんにおしえてもらっていてよかったかもしれない。