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新人
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新人-6

「どうしました?」

「どうして新人のカナちゃんがシャンプーしてるの?」

心臓がドクンと鳴った。

「え、それはチーフが―」


「ギャアアァァアアアアアアアアァァアアアアァァッッ!!」


耳をつんざくような悲鳴が店内に響き、ビクンと体が跳ねた。

「ゥァアアア熱いぃぃぃィィッッ…!!」

今度は呻き声が…。
声はサキのもののようだ。
恐る恐るシャンプー台を振り返ると、頭部を抱えて床をのたうち回るサキをカナが無表情で見下していた。
その手に持ったシャワーからはモクモクと湯気が立ち上り、触らなくても熱湯なのだとすぐに分かった。
動悸が激しくなって、息が上がる。胸が痛い。
動けない。
カナが怖い。

「誰か水と氷!早くっ!!」

チーフの金切り声で私は我に返った。

「はいっ!」

私はすぐに駆けだした。
他のスタッフもみなそれぞれに動き出す。
そんな中、カナだけはシャワーを手に持ったまま冷たい瞳で立ち尽くしていた。





幸い、サキの火傷は大したことなく救急車を呼ぶほどのものではなかった。
しかし、所々赤くなって見ていてとても痛々しい。
チーフとカナと並んで私も頭を下げた。
その後ろで藤も、他のスタッフも謝罪する。
サキは新人だということで表沙汰にはしないと言ったが、「もう二度と来ない!」と店を出て行った。
そうだよな…。
私は申し訳無い気持ちでいっぱいだった。





その後何事も無かったように営業を続ける中、チーフは私とカナを裏の休憩室に呼び出した。
彼女は、なぜカナにシャンプーを任せたのかと私を責めた。

「チーフが指示したんじゃ…ないんですか…?」

「新人にそんなことさせる訳無いでしょ!?」

私だって、1ヶ月程の新人にシャンプーをさせないことぐらい知っている。
カナに任せることに戸惑いがあった。
だけどカナはあの時チーフの名前を出した。
チーフがやれと言ったことを私が阻止出来る訳無いじゃないか。

「私、あなたがカナちゃんにシャンプーお願いしてるとこ見たのよ!?」

ああ、そうか。
カナは呟くように「チーフが私に」と言った。
呟く程度だったから他の人には聞こえなかったんだ。
口の動きだって、きっと鏡に向かっていたから見えなかった。
他の人にしてみたら私が、ついていたカナにシャンプーを任せたように見えていたんだろう。


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