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新人
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新人-5

「おはようございまー…」

次の日、出勤して一番最初に目に飛び込んできたのは藤とカナが仲良く話している姿だった。
こんなの何てこと無いのに。
それでも心にもやがかかる。
昨日のことが引っ掛かっているらしい。

「おう、おはよ」

「せんぱぁ〜い!おはようございまーすっ!」

カナが駆け寄ってきて私に抱き付く。
また心が曇った。

「…おはよ」

愛想笑いはした。でも私はカナを引き剥がして自分のロッカーへ向かった。
影からコソコソ話し声がする。
藤とカナが私の様子がおかしいと話しているのだろう。
気分が悪い。
寝不足のせいかもしれない。
でもそれだけじゃないのも分かってる。
そしてそんなこと考えるのもいけないことだって。
でも…。
藤とカナが一緒にいるだけでイライラする。
藤がカナと笑ってるのが嫌でたまらない。
そのくせ、私にやたらとくっついてくるカナ。
カナの行動は日を増すごとにエスカレートしていった。
しまいにはトイレのドアの前でまで私を待つ始末。
休憩中も着替えにも、カナは私の側にいた。
やっぱり、オカシイ―。
そして決定的な出来事が起きた。





私が、サキという名前の、いつも私を指名してくれる常連のお客さんのカットをしていた時だ。

「サキちゃん、髪ショートの方が可愛いですよ!似合う似合う」

彼女はずっとロングだった。しかしそれにも飽きたということで、いっそのことバッサリ切ってしまおうかとなった。

「本当ですかー!?」

サキも満更では無いらしい。
私は鏡を覗きこんで

「うん!本当!すっごい可愛いよ」

と頷いた。
サキも笑う。

「ありがとうございます!やっぱお姉さんにお願いして良かったーっ!」

「じゃあ、一回洗って乾かして、セットしますね」

その時、カナがすっと私の横に現れた。鏡越しに目が合う。

「チーフが私にって」

「そう、なの?じゃあカナちゃん、お願い。サキちゃん、いってらっしゃい」

「はーい、行ってきまーす!」

サキが手を振る。
私は箒を持ってきて、切った髪を集めていた。
すると頭上で

「あれ?」

というチーフの声がして私は顔を上げた。


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