新人-4
「あ、もしもし藤?」
夜、無性に藤と話したくなって電話した。
明日になれば会えるのに、胸がザワザワして一人ではいられなかった。
『どしたぁ?珍しいな』
「いや、まぁ特に理由はないんだけどさ」
『ふーん、そう』
「今日は一日何してた?」
『なーんもしてない。寝てた』
「暇人」
『仕方ねぇだろ。お前がカナちゃんと遊び行くから』
「あ…うん、ごめんね」
『え?何で謝んの!冗談だよ!』
「あ、そう、そっか。あのさ…カナちゃん変わってるよね?」
『変わってる?』
昼間のカナが脳裏に浮かんだ。
虚ろで、だけど強い眼光で睨み付けながら、ボソボソと口を動かす。
考えないようにしていたけれど、やっぱり鳥肌が立った。
「うん…。抱きついたりさ、今日もずっとベッタリでさ、腕組んできたりさ」
『う〜ん、そんなに変わってるか?』
藤にそのことだけは言えなかった。
「そう、だよね」
でも藤に同意してほしかったと思う自分は嫌な女だと思う。
『カナちゃんはさ、お前のこと大好きなんだよ。尊敬もしてるしさ、そんな子を変わってるだなんてダメだぜ』
―…?
「どうして藤がそんなこと分かるの?」
『ん、まぁ色々な。それじゃ、また明日店でな。おやすみ』
「っ!」
そのまま虚しい電子音が流れる。
切られた――。
…藤。…どうして。