新人-12
「何でって、隠れて撮ったからですよ、昔」
昔!?いつ!?
高校の時?
もう一人のカナって誰?
カナが徐に私を指差す。
しかしその指は私では無く、私の後ろを指しているようで、私は恐る恐る振り返った。
「な、何…これ…?」
驚愕した。
そこには壁いっぱいに私の写真。
「素敵でしょう?先輩」
カナがしゃがみ込んだまま呟く。
カナの姿が見えなくなると、その雰囲気に覚えがあるような気がした。
見た目じゃなく纏う雰囲気。
何かを思い出せそうな。
同じ部活内のもう一人のカナ。
カナが前に言っていた、『派手な夏菜』と『地味なカナ』。
夏菜と対極にいるようなカナ。
………っ!
もしかして、あれが…カナ?
「でも、あの子は私の一つ下のはず…」
「やぁっと思い出したみたいですねぇ。その子も香奈っていうんですよ」
「それなら年齢が合わない!あの子は私の一つ下だった!」
「私がいつ先輩と歳が二つ違うって言いました?」
…え?
「顔変えるのって時間かかるんですよね。入学するの、一年遅れちゃったんですよ」
「あんたが…香奈なの?」
「分かりましたか?先輩」
ニタァっと粘り気のあるような笑顔で、立ち上がりながら振り向く。
香奈は部活でいつも一人だった。
いつも隅にいて暗いオーラを纏って、幽霊のような他者を寄せ付けない雰囲気だった。
名前も分からない程に存在感もなく、悪い意味で空気のような子だった。
私の一つ下だったが、技術も後輩たちにあっという間に抜かれ、どうしてバドミントンをやっているのか分からなかった。
「私、先輩のこと大好きだったんです」
ゆっくり、一歩一歩香奈が近付いてくる。
「先輩は綺麗で可愛くて運動も出来て、いつも友達に囲まれてて羨ましかったぁ…。私も先輩の側に行きたかった」
「だけどこんな私じゃ無理。先輩の周りにいる人達も輝いてて、諦めてたんです。遠くで見てるだけでいいやって思ってたんです」
部活を辞めなかったのはその為―?
「でも――それも無理でした」
香奈の目が三日月型に歪む。
「先輩が悪いんですよぉ。卒業する時、最後の部活で先輩言いましたよね。『みんな大好きだよ』って」
確かに言った。
部活には楽しい思い出ばかりしか無かったから。