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このかけがえのない世界へ
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このかけがえのない世界へ2-2

「すみません、無断でお邪魔して」

「いや、いいんだよ。大方道にでも迷ってここまでやって来たんだろう?」

「えぇ、その通りです」

「この辺りは見ての通りジャングルだからね。僕たちみたいな地元の奴等でも迷うことがあるんだ。だから旅人さんなら尚更、ね」

彼は奥さんから貰ったタオルで2、3度顔を拭いた。

「まぁ、今日はもう日も暮れるだろうから、ここで泊まっていけばいいよ。何もないところだが、野宿よりはマシだと思うし。
明日になったら僕が近くの町まで案内するよ」

「何から何までありがとうございます」

眼帯の人が丁寧にお辞儀をすると、アルもそれを見て軽く頭を下げる。

「ははっ、いいよ。そんなお礼なんて。
そうだ。そんなことより旅人さん。お腹空いたでしょう?
この村の料理はとてもおいしいですよ。ささ、こちらへ」

男性は言うやいなや、眼帯の人とアルの手を握って2人と共に応接室を後にした。





連れていかれた先は、これもなかなか立派なダイニングルームだった。
先程は見られなかったお手伝いさんたちが慌ただしく動きまわって着々と準備が進められている。

十数人が座れるであろうテーブルには高価そうなグラスや食器類が3人分用意されてあった。

「さ、座って」

男性は2人を座らして、自分も座った。

「あの、3人分しかないのですが、奥さんのは…」

「あぁ、大丈夫。彼女のは必要ないよ。
…どうしたんだい、旅人さん。そんなに彼女が心配かい?
まさか、恋でもしたんじゃ…」

「いえ、そんなことは…」

「ははっ、冗談だよ。
彼女はこの村一番の美人だからね」

本当に嬉しそうに話す男性を見て眼帯の人は目を細めた。

「お、料理が来たぞ。さぁ、召し上がって下さい」

3人の前にそれぞれスープが並べられる。
半透明の金色のスープ。コンソメのような匂いがするスープだが、何か黒い粒が浮かんでいる。

よく見るとそれはハエだった。数十匹のハエがスープに浮かんでいた。
そのハエの羽はきれいにもぎ取られ、生きたままスープに入れられているため、そのスープの表面上を必死に泳いでいた。

「えっと…これは?」

「ハエのスープだけど…何か?」

そう言って彼は瞬く間にきれいに飲み干した。

その様子を見たアルは、恐る恐る一口飲んで、そしてこちらも全部飲んだ。

眼帯の人は全く飲まなかった。


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