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生徒会へようこそ
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生徒会へようこそ【MISSION'1'自己紹介を円滑に遂行せよ!】-9

「父は、会社を他の者に任せ、寿絵瑠はお嫁に行って幸せな家庭を築いて欲しいと言う」

へぇ、いいお父さんじゃないか。

「しかし寿絵瑠は会社を継ぎたい。小さな頃から父にそう言ってきたが、父は真剣に取り合ってくれん。それは何故か。
分かったのだ、寿絵瑠の周りにはいつも人がいない…」

宝さんは寂しそうに目を伏せた。
人がいない…。宝さんは好きで一人だった訳じゃないのか。
いつも一匹狼でクールだと思ってたけど、本当は違ったんだ。

「これでは父のような経営者にはなれないのも頷ける。経営者に必要な能力を養うには、生徒会に入るのが一番だろう」

「確かに、そうだけど…」

僕はバカか!
認めちゃ意味ないだろ!

「寿絵瑠は皆に認めてもらえるような人間になり、父を納得させたいんだ」

それなら生徒委員会でもいいんじゃないかな。
いや、絶対こっちの方が向いてると思う。

「分かったなら、さよならだ。ありがとうな」

「ああああの!まだ待って!」

「優はそんなにまでして寿絵瑠を連れ帰らなきゃいけない理由でもあるのか?」

宝さんが首を傾げる。
理由?あるよ。
僕が停学になるかならないかの瀬戸際なんだ!
でも、こんなの言える訳無い。
『オツ』って人が言ってたことをそのまま言えばいいんだ。
【宝さんだから声が掛かった】
【僕らは選ばれた人間】
【必要とされてる】
【生徒に直接働きかけられる】
グルグルと言葉が回っている。グルグルグルグル…

「無いなら行くぞ」

ヤバい!何か言わなきゃ!

「宝さんは僕に必要な生徒なんだっ!!」

無駄にでかい声だった。
僕の声は廊下に響き渡った。
全部ごっちゃになってる。しかも、何かすごいこと言っちゃった気がする…。
冷静になって、顔が赤くなってくるのが分かった。
宝さんが無表情で突っ立っているのが余計にイタい。
急に宝さんが向きを変え、生徒会室に入っていった。
ああ…引かれた…終わった…。
そりゃそうだよな。あんな意味不明な発言しちゃったら。
うぅっ。

「会長、やはりこのお話は無かったことにしてください」

宝さんの声が開いたままのドアからする。
ああ、そうだよな。無かったことだよな…ってあれ?
宝さんが部屋から出てきてドアを閉める。

「宝さん、今のは?」

「そういうことだ。あの男は気に食わんが、優には借がある」

宝さんが僕を上目使いで見上げ、ニコッと笑った。

「お前には寿絵瑠がいなければいけないのだろう?」

「あ、えっと…」

あれ、ほっぺ赤い気が…?

「戻るぞ、優!」

「…うん!」

僕は数歩前を歩く宝さんの後を追った。
僕は宝さんを追ってばっかりだ。


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