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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風〈決意篇〉-1

気付いたら森の中を一人で彷徨っていた。小さな手と小さな足で道を切り開いて、やっと出た山道で力尽きて倒れてしまった。次に目が覚めると見知らぬ天井が広がっていた。

自分の中に残された断片的な記憶は途中からしかない。目を開いて見ると見知らぬ顔が覗いていた。

きっと、たぶん知らない人。

名前を聞かれてこう答えたらしい。

「日向。」

彼が覚えていたのはただそれだけ。





荒く乱れた呼吸が響く中、静かに目を開けた。ここもまた見慣れない天井。

広く何もない、ただの箱のような部屋で日向は大の字になって寝転がっていた。というより、倒れていたと言った方が正しいのかもしれない。

弾んだままの息は中々調子を戻せないでいる。息苦しくて目を開けるのも辛い程だった。

「マスター、大丈夫ですか?」

祷の声に少し目を開ける。情けないと言わんばかりに微笑もうとする姿に祷は心安らいだ。

「かなり上達されました。皆様驚かれますわ。」

少しずつ呼吸が整っていく、日向は体を起こして座った。体力がもうほとんどない状態にまで疲れ切った体は支えるのも難しく、背中が丸まってしまう。

それでも目の輝きは失われてはいなかった。

「精が出ますね、日向。」

背後からかけられた声にも反応が鈍い。顔を少し横に向けることで反応を示した。

「あっ…マスター!」

祷の反応に何かを感じた。その理由はすぐに明かされた。

「お迎えが来ましたよ。」

その言葉にゆっくりと振り返った。だいたいの予想は付きながらも、緊張して確認をする。

そこにはさっき声をかけた人物ともう一人、少し懐かしい顔があった。お互いにしっかりと顔を合わせて確認しあう。

「カルサさん。」

最初に口を開いたのは日向。

彼のこの一言でまだ記憶は戻っていないことを知らされる。それは安心でもあり、そうでなくもあり、とにかくカルサは複雑だった。

「貴未も来ている。じきにオフカルスに向かうつもりだ。」

オフカルス、日向は頭の中で復唱した。確かその名は特殊能力を持つ人達が集う場所。

もしかしたら自分の記憶を取り戻すものがあるかもしれないと胸を高まらせた。


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