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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風〈決意篇〉-5

「会ったよ。僕もオフカルスに行きたいって言ったら好きにしろって言ってくれた。」

日向の言葉に貴未は声を出して笑った。好きにしろと答える辺りにカルサらしさを感じたのだろう。

「そっか、良かったな。」

後頭部の辺りを優しくポンポンと叩いてみせた。それは言ってしまえば子供扱いなのだが、日向には心地よかった。

貴未はシードゥルサにいた時に日向と一番接していた人物だったから。

「うん。」

 素直な言葉が出る。貴未は日向にとっては特別な存在だった。

 国を出て、シードゥルサに来たのは自分の素性を知りたかったから、だから後悔なんてしなかった。助けを求める人がいる、こんなわずかな力しか持たない自分を必要とする仲間がいるなら尚更の事。迷いなんてなかった。

 その筈だったのに、いざ来てみても何の変化もなかった。

 同じような力を持つ千羅と瑛琳、二人と話がしたくても立場上表には現れない。リュナは体調不良で自室にこもりきり、残るはカルサのみなのだけど多忙につき取りつくしまもない。

 国王だからか、多忙以外にも日向には近寄ろうともしなかった。拒絶されているのかもしれない。

 封印から目醒めた時に少しだけ交わした会話は短いお礼の言葉だった。あれ以来何の会話もしていない。

住む場所を城の中に与えてくれ、城内を自由に行き来する事が出来るのは多分凄い事なんだろうけど切なかった。

 時期が悪いのかもしれない、それでも唯一雷神と風神を目醒めさせる事が出来た自分に対して興味を持つ人はいなかった。

 貴未だけが話しかけてくれたから。

「貴未、ごめんね。火の力の事黙っていて。」

 思い出してつい口にしてしまった。突然の事に貴未も驚きを隠せない。

「なんだよ急に。あの後も散々謝ってたじゃんか。」

「うん、そうなんだけどさ。」

 納得できずに言葉がつまる。やっぱりあれだけ謝っても心のどこかでひっかかっていた。何故心を許せる人に話す事が許されないのか。

「千羅にでも口止めされてたんだろ?仕方ないさ、あの時はそれがベストだ。」

 貴未はまだ引きずる日向に対し、明るい調子で応えてみせた。

「そんな事いちいち気にしてるとハゲるぞ?」

 後頭部の真ん中あたりをつつかれる。横目に見る千羅は意地悪い顔をしていたので日向は思わず吹き出してしまった。

 日向に笑顔が戻ったのを確認すると、貴未は声を上げて笑った。いつもと同じように日向の孤独感を和らげていく。

 孤独は恐怖に似ていて、祷と二人で支えていくには足りなすぎた。何の迷いもなくシードゥルサに来たはずなのに、その選択は間違いなのかもしれないと考えてしまう日もあった。

 自分の力について何か分かるかもしれない、そんな希望を抱いてきたのに地球に居た時よりも肩身の狭い思いをしている。そんな自分が惨めで泣いてしまった日もあった。

 そんな時にタイミングよく貴未は声をかけてくれた。

不安な気持ちで心が染まってしまいそうな時から何度となく救われた。


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