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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風〈決意篇〉-21

「捉えるのは相手次第。日向は巻き込まれた方が嬉しいのではないでしょうか?」

思わず耳を疑った。驚いた顔をするカルサに対し千羅は静かに微笑む。促されるように日向を見た。

彼はまだ何も知らない。しかし何かに気付きつつある。

「何も知らされないのは辛い事です。皇子は言えない辛さしかご存じない。そうではありませんか?」

耳に入る千羅の声は低く優しい、心地よいものだった。知らない事の孤独、それは自分にも覚えが無いわけではない。ただ、全て知りたいというのは自分のエゴのように感じた時期もあった。それと同時に知らなくていい事を知ろうとする相手に嫌悪感を覚えた事も。

今は嫌悪感ではなく、知られた後にくる何かに対する恐怖のが大きい。

「何も知らない方が幸せだろう。」

 あと少しの踏ん切りがつかない。その気持ちは痛いほど二人に伝わっている。

「それも受け止める側の問題です。」

千羅の声はカルサに届いている。それこそ自分のエゴ、しかし日向には全てを知る権利がある。

「あいつは本当に日向なのか?」

カルサが呟いた。

「人違いであれば、オレはあいつの一生を台無しにしてしまう。」

その目に、しかと日向の姿を焼き付けながら言葉を続けた。千羅は瑛琳と顔を合わせた。

「それは皇子にしか分からない事です。何か感じるものはありますか?」

瑛琳が応えた。落ち着いた声に心が安らぐようだ。

「さぁ。」

カルサは微笑んだ。きっと何か感じるものがあるのだろう。寂しげな姿はそれでも日向を見つめている。

いつかは自分の口から伝えなくてはいけないのだろうか。

きみの正体は誰で、何故ここにいるのか。きみがこれから歩まなければいけない道は、もう既に用意されているのだと。同じ道を共に歩くか、似て否なる道を隣に並んで歩くのか、ただそれだけの違い。

「もし、日向が第二皇子ならば…それこそ全てを受け入れる器を持ってもらわなければ困ります。」

カルサと千羅は声の主である瑛琳を見つめた。

「泣いても悩んでも投げやりになっても構いません。逃げ出さない強さを持って頂かなければ…貴方様のように。」

最後はカルサに向けられた言葉だった。どんな事があっても、弱音を吐いても苛立っても焦っても、どんな状態になっても決して投げ出したり逃げ出さなかった。そんなカルサを瑛琳と千羅は見てきた。

強さを持つ、戦える、いつも自分が前に立つ気持ちがあった。そんな彼だからこそ力になりたい。

そんな彼だからこそ、守りたいと思う。

「でないと、お仕えする気になれません。」

瑛琳が笑った。千羅もあわせて笑う。もちろんそれは、カルサにも伝染した。

決意を新たに明らかにする。千羅のきっかけで始まり貴未の助けで深いものになった。誰一人として嘘をついていない、本当の目的が明らかになる。

日向を守ると声にだした、いつかその意味を彼は問うだろう。その時は答えなければいけない。彼が誰で、これから戦う相手は誰なのか。

それは新たなカルサの決意。


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