このかけがえのない世界へ1-2
辺り一面砂しかない灼熱の砂漠に人が2人歩いていました。
1人は眼帯の人、もう1人は少女でした。
「暑いね」
「ね」
「もう水ないね」
「ないね」
「どうしようか?」
「どうしよう?」
眼帯の人が尋ねると少女は短く答えました。
2人が黙々と歩いていると彼らの目の前に人が現れました。
現われたその男は酷くやせ細りふらふらとおぼつかない足取りで歩いて来ました。
そして眼帯の人の足にしがみつきました。
「た、頼む!…水……水を…くれ!!…助けて…」
男が聞きづらい声で言います。
「あなたはもう水を持っていないのですか?」
眼帯の人が男を見下します。
「もう…ほとんどないんだ…お願いします……水を…」
「分かりました」
眼帯の人はそう言うと腰から一丁の短銃を取り出し、引き金を引きました。
轟音とともに男の額から血が吹き出て男は倒れました。
眼帯の人は倒れた男の懐を探り革製の水筒を出して飲みました。
水はまだたくさん入っていました。
「うそつき」
少女が眼帯の人に向かって静かに言いました。
「うそつき?
それはこの人がこんなに水を持っていたことに対して?
それとも…私に対して?」
少女はじっと黙って眼帯の人を見ています。
「別に私は嘘なんてついていないよ。
言ったでしょ?
『私は神様でもなければ神様にもなりたくない』って。
ほら」
眼帯の人は少女にまだ半分水が残っている革製の水筒を渡します。
「水、飲むでしょ」
「…うん」
少女は少し悩みましたが、すぐに水を飲みました。
その少女の姿を見て眼帯の人は微笑みました。
「行こうか、アル」
眼帯の人はまた再び歩き始めました。
アルと呼ばれた少女は小さく頷くとその後ろについて行きました。
2人が立ち去った後には男の死体だけが残りました。