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コンビニ草紙
【理想の恋愛 恋愛小説】

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コンビニ草紙 第十六話-2

これって、

―キスされるのかな。

どうしよう。
キスぐらい良いのかな。
でもまた傷つくのだろうか。
そんな事を回らない頭で考えながら目を閉じる。

ふわっ……。

髪の毛に何かが触れた感覚があった。

「…りょーこさんの前髪に、桜の花びらついてましたよ。」

「え、あ…。花びら…。」

「へぇ、多分、さっきの店の桜が落ちてついたんじゃないすかね。」

彼の手のひらに小さな白い花びらがのっている。

「あははは。びっくりしたー。」

突然私が笑い出したので、彼は『?』という顔を此方に向けている。

本当私って馬鹿だな。
キスされる、なんて思っちゃったじゃない。
柄にも無く緊張したりして、本当馬鹿だ。

…何だか少し切なくなってきてしまった。


「…今日は本当ご馳走さまでした。長い時間ご一緒出来て私もとても楽しかったです。」

「いえいえ、こちらこそ色々ありがとうございました。また店に遊びに来てください。」

彼はいつものようにぺこりと頭を下げた。
勘違いしてしまった恥ずかしさと切なさで早くこの場から立ち去りたい気分で一杯になった。
営業スマイルを浮かべ駅へ歩き出そうとした時、後ろから呼び止められた。

「りょーこさん。」

「…はい。」

「あの、来月、うちの商店街でお祭りがあるんす。季節外れのお祭りなんすけど、
結構毎年盛り上がるので、良ければ一緒にどうでしょうか。」

「え…それって、デートのお誘いですか。」

自分でもそんな事がよく言えたと思う。
酔っているのと、この際どうにでもなれと自棄になったのかもしれない。

「へ?…でーと。デート…。…そうすね。デートのお誘いすね。
如何でしょう。ワタシと一緒に、雪ノ下祭に行ってもらえませんか。」

真っ直ぐこちらを見ている彼はいつもよりもキリっとしているように見えた。
こんなに真正面からデートを申し込まれた事なんて無いから、
自分で聞き直しておいて、ドキドキしてしまう。

「…私で良ければ、喜んで。」

そう答えると、彼はいつものように猫の微笑みで頭をかき、
また詳しくは今度話すと言って頭を下げた。
私も軽く頭を下げると、少し早歩きで駅の改札に向かった。


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