恋してくれますか-9
…先生、なんで?
顔、すごく熱いよ…。
下唇を微かに噛んで、下を向く。
肩までで切り揃えた髪が、頬に触れて視界に入った…。
「ちょっとそこの人、どーかしたの?」
え。
突然聞こえた明るい声で、一気に現実に引き戻される。
「ご、ごめんなさい、邪魔なとこに……あっ。」
立ち上がって振り返り、思わず間抜けな声が出る。
パーマをかけた茶色い髪の毛。
丸い目。
つい上履きを見て確認してしまう。
『由香ちゃん』さん、だ。
「あれ、君だったんだ。」
「へ?」
『由香ちゃん』の親しげな態度に、首を傾げる。
私のこと、知ってるのかな。
「ほら、君あれでしょ、成績上位にいつもめっちゃ入ってる人。」
「そ、そんなに入ってたかな…?」
「あぁ〜えーと、名前なんだっけな。」
考え込んでいる『由香ちゃん』に、私は慌ててお辞儀をする。
「あっ、は、畑本詩織です。」
「畑本さん。」
「はい。」
「先生は、生徒のこと好きになってくれないよ。」
「は、い?」
笑顔のまま言われた突然の言葉が、消化出来ずに頭を回る。
先生、って?
「高橋先生のこと、好きなんでしょ?」
「えっ。」
「先生は、先生だよ。」
『由香ちゃん』の会話のテンポは私には早過ぎて、理解がなかなか追いつかない。
それってどういうこと?
そう聞こうとして、私は息を呑む。